際どいボール球にマウンドを2歩、3歩下りて行って、背中越しに返球を受けるような態度は、相手チームをメラメラさせて、打席での過剰な気負いを煽っているようだ。

「左投げの谷元（圭介）」…かつて、日本ハムの中継ぎとして堂々のマウンドさばきを見せた167cmの右腕。今季、13年目のシーズンを中日で迎える。谷元の球筋を見て驚いたことがある。「角度」が素晴らしかったからだ。ボールの角度と上背は比例しない…自分なりの“経験則”が1つ増えた瞬間だった。

　TDKの165cm左腕・佐藤、バックネット裏から見ると、右打者の膝元にきまるクロスファイアーの角度が思った通りに鋭く、打者がボール球だと思って見逃しており、一方で、投げる佐藤開陸のほうは、打者に対して「効くボール」であることを理解した上で、自信満々で投げている。でなければ、あれだけ迷いのない決然とした腕の振りを繰り出せるわけがない。

　2、3訊いてみると、やはり「小さいからなぁ…」というスカウトの方たちの反応だった。

　しかし、ふと考える。  

　これだけの角度と度胸があって、スライダーの鋭さと低めの制球力を持っていれば、佐藤開陸の「165cm」とソフトバンク・嘉弥真新也の「172cm」はいったいどう違うのか。  

「背」で決めると、秋広優人（巨人）みたいに取り逃がすぞ……そんな気が、今、とてもしている。打者をやっつけるのは、決して「上背」ではない。

　気迫と負けじ魂と、さらには知恵と煙に巻こうとする「いたずらごころ」……目に見えないものが165cmのサウスポーを輝かせる。

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