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「練習が嫌で脱走しました」「1日ご飯7合食べてます」廃部寸前から初の甲子園 “離島の球児”が証言するセンバツまでの2年半【大崎高校】
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKYODO
posted2021/03/18 18:23
昨年11月、九州地区大会の準々決勝で延岡学園(宮崎)に競り勝つ。センバツ有力となり試合後に喜ぶ大崎高校の選手たち
村上 はい。自分、走るのが苦手で、インターバルのときもみんなの足を引っ張ったりしていて。午後からインターバルをやると言われていたので、昼ご飯を食べているとき、もう嫌だと思って自転車で逃げました。
――佐世保にある実家まで自転車で1時間ぐらいかけて帰ったそうですね。監督曰く、家に着いたときは血だらけだった、と。
村上 必死でこいでいたので、坂道を下っているとき、砂利にタイヤをとられて、転んでしまったんです……。
――それでも2、3日後に練習に戻って、監督は「あれから村上は変わった」と話していましたが。
村上 母が、自分は高校3年生のときにソフトボールを辞めて、すごい後悔した、という話をしてくれて。もう一回、やってみようかなって。最初は怖かったんですけど、みんなも何事もなかったかのように迎えてくれたので。あれから、がんばろうって思えて、インターバルも急に走れるようになったんです。やっぱり気持ちなのかなと。
――今では、遅い選手の背中を押してあげているそうですね。キャプテンの秋山君は「あいつがいなかったら優勝できなかった」と言っていました。
村上 そうですね、2年になってからは、けっこう引っ張れたかな、と。きつい練習になると昔は嫌だなと思ってたんですけど、今は、やってやろうって思えるんで。
――村上君も足、太いですね。
村上 ご飯と、冬のトレーニングのお陰じゃないですか。ご飯も1年生のときは吐きながら食べていたんですけど、今は7合近くは食べられるんで。
――いよいよ甲子園です。緊張していますか。
村上 緊張はしていると思います。でも、ずっと憧れていた舞台ですし、今までより強いチームとできるので楽しみですね。
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