サラッと言い放ったその笑顔が、神宮のマウンドで「ON砲」を打ち取って、ベンチに戻る時の得意げな笑顔と同じだった。当時、プロ野球の現場を離れていた安田さんは、後輩の指導で、時々グラウンドにいらしていると聞いていた。

「ストライクゾーンで取った三振はいくつあった？」

　短く刈り込んだ髪に、プロ野球で長く活躍していたとは思えないような穏やかな丸顔……私にとっては大先輩であり、それ以上に「大スター」だ。震えるような思いで私の素性を伝え、「ヨシッ！」に至ったいきさつを話したら、そうかわかった、まあ座れ！と。そこから「サウスポーとはなんぞや」……目からウロコの講義が始まった。

「あのサウスポーの一番いいところはどこだと思う？」

　と問われて、スピードガンだと130キロちょっとしか出ないのに、そのまっすぐで空振り三振の山が築けること、だと思ってます――そう答えたら、フンと一蹴された。

「今の4つの三振のうち、（ストライク）ゾーンで取った三振いくつあったと思う？」

　見栄もあり、2つはストライクゾーンで振らせたと思いますと答えたら、

「ばーか、全部ボール球よー」

　またも一蹴されてしまった。

「六大学のいいバッターになれば、あの程度のボール球なんて捨てられてしまう。うわべの三振にとらわれたら間違える。使えるサウスポーっていうのは、ゾーンでどれぐらい空振りを奪えるボールがあるかどうかよ」

サウスポーは“なんだか”打ちにくい？

　特にサウスポーは、基本的にボールが見にくいからな……解説は続く。

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