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「私は時代に恵まれました」主婦レーサー平山智加35歳に聞く“なぜボートレース界で女性は輝いているのか?”
text by
長田昭二Shoji Osada
photograph byBOATRACE振興会
posted2021/03/13 11:03
レーサーであり主婦でありYouTuberでもある平山智加選手
「『やっぱり女子はまだまだ』と言われそうで……」
職業としてボートレーサーを見たときの魅力の一つに「収入の高さ」がある。平均年収は1000万円を超え、史上最高生涯獲得賞金額は38億円(現在も更新中)。もちろんプロ野球やJリーグでも高額所得を狙うことは可能だが、ボートレーサーは「高校卒業まで未経験」という点が他の競技と決定的に異なる。中学や高校に野球部やサッカー部はあっても、「モーターボートレース」を部活にしているところはない。それまでの経験に関係なく、誰もが養成所に入った瞬間、同じスタートラインに立てる職業なのだ。
「もちろん収入も魅力です。頑張って成績を残せば、収入という形で結果が付いてくる。住みたい家に住めて、乗りたい車に乗れて、夢をかなえることができる仕事です。
自分がボートレーサーになって初めて気付いたのは、世の中の人、特に子どもたちの大半がボートレースという競技の存在を知らない、ということ。私も、たまたまボートレース好きの父から『やりたいことがないならボートレーサーを目指してみたらどうだ?』って言われてこの道に進んだだけで、そうでなければボートレースのことなんて知らないままOLさんになっていたのかもしれない」
スタートラインは同じで、そこに並ぶ全員が初心者。そこから先どれだけ頑張ったかで勝敗が決まっていく世界。しかも男性と女性が一緒に戦える競技でもある。
「女子戦も混合戦も同じ意識で戦っているつもりですが、違うプレッシャーがある気がします。女子戦は勝つことが当たり前、でも混合戦は、勝てば『女子のレベルも上がって来たね』と評価されるけれど、負けると『やっぱり女子はまだまだ』と言われそうで、それに対する緊張感はつねに離れることがない。女性である以上、持って生まれた体力や筋力では男子レーサーには敵わない。その代わり、男子より5キロ軽い体重で乗れるというハンデをもらっているので、それは最大限に活かすべきだと思うんです。
でも、そんなことを真剣に考えられる競技であること自体が珍しいんですよね。男性と女性が戦える環境があることも、ボートレースの魅力の1つだと思います」
「美人レーサー」と紹介されることに違和感はありますか?
平山のほかに、今回の連続インタビューに登場した大山千広、守屋美穂の3人は、単に競走成績が優れているだけでなく、「美人レーサー」として紹介されることも多い。
ただ、成績と実績で評価されるべきアスリートに、「美人」という冠を載せることは当人に対して失礼なのかもしれない。最後に率直に訊ねてみた。