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【弥生賞】タイトルホルダーが連敗中のダノンザキッドに勝利するまで 「正直、ぶつけたくはなかったですが…」
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph byPhotostud
posted2021/03/10 17:00
弥生賞はタイトルホルダーが制した。ダノンザキッドに初めて勝利をあげ、皐月賞へ期待が高まる
東スポ杯ではメンコを外してみた
新馬勝ちをしたタイトルホルダーを、栗田は2戦目で早くも重賞にぶつけてきた。約1カ月半後の東京スポーツ杯2歳S(GIII、東京競馬場、芝1800メートル)だ。相手が強化されるこの舞台で、いくつかの課題を持って臨んだ。そのための1つの策としてデビュー戦で着けたメンコ(耳覆い)をこの一戦では外した。
「デビュー戦はパドックからレースを通して落ち着き過ぎていたという事で東スポ杯では外してみました」
少し気合を乗せつつも、同時に次のようにも考えていた。
「ジョッキー(戸崎)とは折り合いを意識して『初戦のような逃げる競馬はしないようにしよう』と相談しました。力まず、少し抜けた走りを目指したんです」
「負けたが力があるのは間違いないと確信」
スタートは例によって抜群に良かった。それは行かそうと思えば行けるスピードだったが、戦前に話していた通り、逃げる競馬はせず番手に控えた。しかし、すぐ後に指揮官が唇を噛む展開になる。
「前へ行った馬が思ったより早めにバテてしまい、押し出されるような形になってしまいました」
ラスト400メートルを切ってタイトルホルダーが一瞬、先頭に立つシーンを作った。しかし、次の刹那、すぐ右後ろにつけていた1番人気馬ダノンザキッドがかわしていった。万事休すの態勢だったが、そんな苦しい状況に於いて栗田は一筋の光明を見た思いがした。
「かわされた後、ズルッと下がる事なく食らいついて行きました。枠順が逆ならまた違った展開になったんじゃないかと思えるほどで、負けはしたものの力があるのは間違いないと確信出来る競馬でした」
2着に負けたものの、この一戦がその後を占う意味でも大きな意味を持つレースとなった。