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【弥生賞】タイトルホルダーが連敗中のダノンザキッドに勝利するまで 「正直、ぶつけたくはなかったですが…」
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph byPhotostud
posted2021/03/10 17:00
弥生賞はタイトルホルダーが制した。ダノンザキッドに初めて勝利をあげ、皐月賞へ期待が高まる
「おそらく寒暖差の激しい気候から」
「馬体をチェックした時に前掻きをする素振りを見せました。すぐに診療所へ連れて行き、その日は絶食させる事になりました」
軽い疝痛(腹痛)だった。「おそらく寒暖差の激しい気候からくるものかな」(栗田)と推測された。不幸中の幸いだったのは、それが本当に軽度の症状だった事。そのため最終追い切りを1日遅らせるだけで予定していた弥生賞に臨めた。
「日曜日のレースだったし、大きな問題にはならずに済みました」
改めて木曜の朝、横山武史が乗った。その時の様子を栗田は次のように言う。
「武史に『前を走る馬を意識せずに自分のペースで走らせて』と伝えた事もあり、だいぶ離される形でのフィニッシュになりました。ただ、上がってきた武史は『落ち着いて折り合って走ってくれました』と明るい表情だったので、追い切り自体はうまくいったと思えました」
落ち着いた雰囲気はレース当日も同じだった。
「前走後に放牧して、帰ってきた後はずっと落ち着いています。体は大きく変わっていないけど、精神的にはだいぶ成長したのだと思います」
連敗中のダノンザキッドと3度目の戦いに
連敗させられているダノンザキッドがここにも名を連ねて来た。みたびの対戦に関しては、戦前、次のように考えていたと語る。
「皐月賞の権利を取るために間隔を考慮したら弥生賞になっただけで、相手の事はとくに考えていませんでした。正直、ダノンとはぶつけたくはなかったけど、本番になればいずれ当たるわけだし、この相手がいるから回避しようという気は一切ありませんでした」
ゲートが開くと若いジョッキーにいざなわれたタイトルホルダーは、新馬戦以来となる“逃げ”の手に出た。
「武史がレース前に『他の馬の出かたを見ながら位置取りを決めます』と言っていたし、枠順(4番枠)を考えてもハナへ行く事は充分に想定内でした。ムキになって逃げているわけではなく、パドックでも落ち着いて歩いていたので、大丈夫とは思ったけど、同時に『このまま押し切れるのかな?』という気持ちにもなりました」