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「東北人は耐え忍ぶメンタリティを」宮城出身の番記者が心打たれた手倉森監督の人間力【2011年のベガルタ仙台】
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byToshiya Kondo
posted2021/03/11 06:02
ホーム再開となった浦和戦。キックオフ前の晴れ渡る空とともに勝利を手にした光景はチームもサポーターも報道陣も忘れない
“事件”はリーグ12戦負けなしの甲府戦で起きた
5月22日に行われたモンテディオ山形との「みちのくダービー」では、山形出身で、ベガルタの生え抜きである右サイドバックの菅井直樹が決勝ゴールを決め、開幕からのリーグ戦無敗記録を7に伸ばした。
震災発生から100日目となる6月18日のアルビレックス新潟戦では、アディショナルタイムにまたしても菅井が身体を投げ出して同点ゴール。開幕からのリーグ戦無敗記録を11として2位をキープする。
「1試合の結果に一喜一憂しないメンタリティを、選手たち全員が共有していたのが印象深いです。飛び抜けたヒーローはいないんですけど、チームとして機能していた。守備も安定していました。GKの林卓人選手はスーパーセーブを連発していたし、この年に加入したボランチの角田誠選手は身体を張っていた。センターバックの鎌田選手とチョ・ビョングク選手は競り合いに強くて、中央は本当に堅かった」
さらに、6月22日のヴァンフォーレ甲府戦に4-0と完勝し、開幕からリーグ戦12試合負けなしを達成した。
しかし、その日、事件が起きた。
この試合でベンチスタートとなり、途中出場した関口が、指揮官の期待に応えられなかったうえ、サブに回ったことに不満を漏らして衝突したのである。
「手倉森監督には、全力でプレーしているようには見えなかったようで、厳しい口調で関口選手を諭した。現役の日本代表選手なのだからなおさらだということで、じくじたる思いで自宅謹慎を言い渡したと思います」
騒動の中で感じた手倉森監督の人間力
リーグ中断中にはスパイクの踵に「絆」「共に歩み未来に向かって」という文字を入れ、リーグ再開のフロンターレ戦では発熱を押して奮闘した男である。自分がチームを引っ張るんだという気持ちが強すぎて、サブメンバーになったことにショックを受けたのかもしれない。
だが、この騒動のなかで、千葉は改めて指揮官の人間力を知る。
「関口選手と交代させた柳沢選手や、ベンチで出番のなかった選手たちに『俺が使った選手が力を出し切らずに申し訳ない』と謝罪したというんです。そこまで選手のメンタルに配慮しているんだなと、心打たれました」