「相手が天心でも“ふざけんなよ”って思う（笑）」

　ジムでは那須川や白鳥大珠（一昨年の世界トーナメント優勝者）とスパーリングをすることもある。

「向こうは軽くやってくれてるんですけど、それでもボコボコにされますよね。そこで私は“この野郎！”“ふざけんなよ”って思うんです、相手が天心でも（笑）。天心や大珠くんに対して“この技を当てられるようになりたい”と思ってやってます」

　この環境にこの負けん気。強くなるのは必然だったか。ずっと背中を追ってきた那須川は、キックボクシング“卒業”とボクシング転向が噂されている。独り立ちも寺山の課題だ。RISEでは新たなエース、いわば“ポスト天心”が誰になるかもテーマになっている。

　寺山もその候補だと思えるのだが、本人は「私には私のやることがある」と言う。彼女の役目は「女子キックをもっと盛り上げて、広めること」。格闘技をやることで人間としても成長できた。だから恩返しがしたいとも考えている。

高橋洋子の歌声をバックに入場した

　横浜アリーナでは、映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』とのコラボレーション企画で、高橋洋子がステージで『残酷な天使のテーゼ』と『魂のルフラン』を歌い、それをバックに寺山が入場した。

「時間かかるので先にリングに入った田渕選手には申し訳なかったですけど」と言うのが寺山らしいが、やはり鳥肌が立つような経験だったそうだ。

「凄く力になりました。もともと目立つのは好きじゃないんですけど、こんな経験は普通の二十歳じゃできないですもんね」

　RISE女子の“顔”として、メディア露出などこれからさらに目立つ場面は多くなる。そんな状況に「照れない」ことも大事だと言う。

「プロレスラーの渡辺未詩さんとYouTubeの撮影で一緒に練習したこともあって。プロレスラーの方と練習する機会があるなんて思ってなかったですよ。いろんな人に会うことが刺激になるし成長にもつながると思いますね」

寺山（上）と渡辺未詩　©Norihiro Hashimoto

　本人曰く、選手としての完成度は「5（%）」。フィジカル強化は海外の強豪との対戦を見据えてのことでもある。やりたいこと、まだできていないことは山ほどあるから満足はしていられない。それにジャニーズにだって会わなければいけないではないか。

「そう！　そこなんですよ（笑）」

　インタビューしていてこの言葉が何より力強かった気もするが、それは取材者との阿吽の呼吸が成り立つ勘のよさなのだと言っておきたい。

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