熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
本田圭佑の移籍不成立に「いい気味だ」 ボタフォゴファンから痛烈な皮肉…降格で救世主から嫌われ者に
posted2021/03/02 17:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Getty Images
1990年代から2000年代にかけて欧州を旅行していて、通りすがりの人から突然、「ナカータ」と呼ばれた日本人は多いのではないか。そう、ペルージャ、ローマ、パルマなどで活躍した中田英寿氏のことだ。フットボールの本場で高く評価された選手であり、驚きはしても悪い気はしなかったはずだ。
今、日本人がリオデジャネイロの町を歩いていたら、「ホーンダ」と声をかけられるかもしれない。その際、嘲笑するような素振りが見えたら、それはフラメンゴかフルミネンセかバスコダガマのファンだろう。もし怒りを露わにしていたら、間違いなくボタフォゴのファンだ。
降格に「悪夢と言いようがないシーズン」
2月25日、リオの古豪ボタフォゴがブラジルリーグ最終節でも敗れ、5勝12分21敗の最下位で今季の全日程を終了した。もちろん、2部降格である。
あるボタフォゴ・ファンは、「悪夢としか言いようがないシーズン。最初に大きな期待を抱いただけに、ひどく失望した」と嘆き、かつ憤る。
「最初に大きな期待を抱いた」最大の理由は、鳴り物入りで本田圭佑が入団したからだ。「ワールドカップ3大会に出場して活躍し、ACミランで背番号10を付けた男」、「日本フットボール史上最高の選手」と喧伝され、ファンは彼が攻撃の中心となり、なおかつリーダーシップを発揮してチームを躍進させてくれることを夢見た。
1万人以上のファンが本田加入を大歓迎したが
昨年の2月7日、リオ国際空港の到着ロビーを数千人のファンが埋め、大歓声で本田を迎えた。クラブ差し回しの大型バスに乗り込むと群衆が何重にも取り囲み、バスは10分以上、身動きが取れなかった。
翌日、ホームスタジアムで内外の記者100人以上を前にして入団会見。本田は「空港での歓迎は、人生で初めて見る光景。とても嬉しかった」とファンに感謝し、「近年、ボタフォゴが低迷しているとしたら、それは僕にとってもチームメイトにとっても大きなチャンス。みんなで上へ行くためにベストを尽くす」、「これまで自分が経験してきたことを全部、このクラブに置いていきたい」と力強く抱負を語り、地元メディアから喝采を浴びた。
そして、1万人以上のファンが待つスタジアムへ向かうと、両手を高く掲げて熱い歓呼に応えた。
あれから1年余り。今となっては、随分昔のことのように思える。