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SNAIL RAMP竹村哲が語る“バンドマンとキックボクシングのギャップ” 「はじめは吐き気が止まらなかったけど」
posted2021/02/28 06:00
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
NKB
いったいキック番外地という昔のイメージはどこに行ってしまったのか。
酒焼けしたしゃがれた声で「お前、何をやっているんだよ。さっさと辞めてしまえ」といった痛烈な野次はどこからも聴こえてこない。代わりに「どっちも頑張れ!」という、温かいエールが聴こえてくるだけだ。
2月20日、東京・後楽園ホールで行なわれた日本キックボクシング連盟(NKB)新春第1弾『必勝シリーズvol.1』。新型コロナウイルスの影響で客席の半分ほどしか入れられないが、場内には明るく開放的な空気が漂っていた。数あるキックボクシング団体の中で、かつてのNKBには「暗い」「怖い」「殺伐としている」といったネガティブなイメージしかなかったのに。
「確かに、最近のNKBは明るくなったとよく言われます。でも、そうなるとは正直思っていなかった。まあガラッと変わったというより、徐々に変わっていったのでしょう」
声の主はNKBの興行統括とマッチメークを担当する竹村哲。現役時代はNKBウェルター級王者に君臨していたキックボクサーながら、音楽ファンにはSNAIL RAMPのリーダーとしての方が通りはいい。現在バンドの方はほぼ活動休止中ながら、2000年にはオリコンで週間売り上げ1位を記録するなど、いまも伝説のバンドとして語り継がれている。
バンドマンとキックボクシングのギャップは
それにしても、黄色い声援がひっきりなしに飛ぶバンドマンの世界と、ストイックな調整と減量が強いられるキックボクシングの世界にはギャップがありすぎるように思える。裏方だけではなく、選手も経験している竹村はその温度差にどうやって耐えたのか。
「いや、そういうのは全くなかったですね」 エッ、どういうこと?
「デビュー戦で勝ち名乗りを受けた瞬間のドカーンという思いはバンド時代には、いやそれまでの人生において一度も経験したことがないものだった。練習も減量も本当にきつい。でも、グ~ッと押さえられていたものが試合で勝った瞬間にドカーンと爆発する」
そのインパクトに魅了されてしまった?
「そうですね。もちろんバンドをやっていれば辛いことやきついことはいっぱいある。でもキックほどギュ~ッと凝縮され、一気にドカーンというのはない。振り幅でいえば、キックの方が大きいんじゃないですかね」