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松田直樹への思い、18歳息子との直接対決…松本山雅・田中隼磨38歳が語る覚悟「今、僕は試されている」
posted2021/02/25 11:03
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Hiroki Watanabe/Getty Images
ベテラン扱いなんか要らない。
個人的な意地でそう主張しているのではなく、松本山雅が松本山雅であるために、自分が先頭に立ってやらなきゃいけない。その使命を胸に刻んで、38歳の田中隼磨は例年のごとくキャンプ地で猛然と走りまくっている。
昨シーズンは8月に右ひざ外側半月板損傷で試合復帰まで3カ月を要した。監督やコーチの立場からすればそのケガもあってコンディションのコントロールを考えるのは理解できる。だが本人としては配慮に感謝しつつも、ひざも問題なく、目いっぱい走れるんだからリミットまでやるだけだ。
田中隼磨からの逆質問「山雅のイメージって?」
鹿児島キャンプの終盤、リモートインタビューに応じた彼はいつものように熱っぽく語り始めた。
「練習をやれるのに、年齢が上だからとかで別調整になったら、やっぱり(チームメイトも)俺を見ると思うんです。やれるんだからやります。だってそれが自分ですし、そうじゃないとチームに示しがつかない。1つ聞きますけど、山雅のイメージって言われたらどう答えます?」
いきなりの逆質問に「最後まで走って、ひたむきに……」と切り出したところで引き取ってくれた。
「そうなんです。あきらめずに走る、闘う、球際で負けないって基本中の基本だし、J1、J2、J3どのクラブにとっても大切なこと。でも山雅はその倍をやってきたし、やらなきゃいけないクラブなんです。
ほかのクラブの倍をやって、ユニフォームを汚してクタクタになるまでやり切る。日ごろの練習からやっていかないと、試合で出せるわけがないじゃないですか。俺がやり続けることで、若い選手がもっとやんなきゃいけないって思ってくれる。だから俺はより一層やらないといけないんです」
彼にとっても松本山雅にとっても2020年は苦渋に満ちたシーズンであった。