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松田直樹への思い、18歳息子との直接対決…松本山雅・田中隼磨38歳が語る覚悟「今、僕は試されている」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byHiroki Watanabe/Getty Images
posted2021/02/25 11:03
昨年はキャプテンを務めたものの怪我に泣いた田中。今季に並々ならぬ覚悟で臨む
病院の前を通るたびに松田直樹を思い出す
自分を含め、最後まで走れているか、闘えているか。ほかのクラブの「倍」をやれているか。危機感を抱いた彼はシーズン後、クラブと話し合いの場を持った。その具体的な内容を明かそうとはしなかったが、最もキャリアの長い選手として「意義ある意見交換をしたかった」と彼は言った。
オフになるとサッカーを一度切り離してきたが、今回はそれができなかった。年末年始も頭から離れなかったという。チームが始動すればどうやっていけばいいか。キャプテンの役職から離れながらも、年長者の立場として「示す」ことをもっと意識しなければならないと考えた。
どのシーズンも変わらず大切にしている。ただ2021年はいろんな巡り合わせがある。
横浜F・マリノス時代から慕っていた大先輩、松田直樹が天国に旅立って10年になる。練習中に倒れたとの一報を耳にして、松本市内の病院に車で駆けつけた。2014年から生まれ故郷に戻って松本山雅の一員になり、遺族の思いを汲んだうえで松田の背番号「3」を引き継いだ。
病院の前を車で通るたびにいつも松田を思い出すという。
「マツさんもあきれていると思います」
「さすがに昨年の成績にはマツさんもあきれていると思います。3番に対する思いっていうのは、俺のなかにずっとありますよ。マツさんの実家でお母さん、お姉さんと話をして“3番をつけてほしい”って言われて覚悟を決めてから、ずっと」
松田が愛した松本山雅は、ファン、サポーターから支持され、愛されるクラブでなくてはならない。だからこそ彼は過呼吸になるほどに自問自答を続ける。
老若男女に愛され、アルウィンに人が集い、「中央線」を謳い上げる。
コロナ禍でファン、サポーターが集まれない今だからこそ、彼らと心で共鳴しなければならない。映像を通しても伝わるくらいに、ひたむきでなければならない。
隼磨は言う。