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大坂なおみ“女王対決”完勝後のセンチメンタルな舞台裏 涙のセリーナへ「いつまでもずっと…子供みたいだけど」
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2021/02/19 17:03
試合前の大坂なおみ(左)とセリーナ・ウィリアムズ。2018年全米とは対照的に、爽やかさと少々の切なさを内包した戦いとなった
「セリーナのサーブのすごさはわかっているから、ブレークするのは難しいだろうと思った。でもそんな考えを捨てて、1ポイントずつ、できる限りのプレーをしようということだけ自分に言い聞かせていた」
セリーナの敗北感を増長させたであろう、ある数値
セリーナは、アンフォーストエラーの多さが敗因だったと記者会見の席で繰り返した。スタッツによればアンフォーストエラーは24本。しかし、同じく2セットで終わった試合でも、3回戦と準々決勝ではそれを上回る数が記録されている。この試合の印象を如実に表している数字は、セリーナのアンフォーストエラーではなく大坂がウィナーで20対12と圧倒していることだろう。
ウィナーを量産したパワーは、セリーナの代名詞、セリーナの象徴だった。それは敗北感を増幅させたに違いない。加えて、スピードで勝り、フィジカルの強さもスタミナも上回った大坂は、時間の経過とともにその差を広げた。
誰もが『24』への挑戦をまだ見続けたいのだ
セリーナがあとどれくらいプレーできるのかわからないけれど……記者会見で、こう切り出された質問のあとに大坂は言った。
「そんなふうに言うと悲しくなる。セリーナにはいつまでもずっとプレーしていてほしいから。子供みたいだけど、本当にそうなの」
涙で記者会見を打ち切っていたセリーナは、大坂の言葉をどう聞くだろうか。大坂だけではない。ファンもまた、大坂の真の女王への歩みとともに、セリーナの『24』への挑戦をまだ見続けていたいのだ。
なんと贅沢な時代だろう。このダイナミックな戦いの中で新たな力を示し続ける大坂は、4度目のグランドスラム制覇をかけて決勝に臨む。
迎える相手はジェニファー・ブレイディ。世界ランク24位だが、昨年の全米オープンの準決勝でフルセットを戦った相手だ。大会のベストマッチと評され、大坂自身、「私の人生で1、2を争う最高の試合だった」と振り返っている。
しかし、大坂がグランドスラムの決勝で負けたことはない。新たなバトンの担い手は、アンタッチャブルなセリーナのキャリアにまた一歩近づこうとしている。
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