フィギュアスケートPRESSBACK NUMBER
「初恋みたいな存在」「どんな人生にもない感覚」フィギュア引退選手たちは何を語り、今後何をするのか
posted2021/02/21 17:02
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Tsutomu Kishimoto
コロナ禍のなか開催された冬季国体のフィギュアスケート(1月27~30日)。今季最後となる全国規模の大会には、“幕引き”を決意した多くの男たちが出場した。一瞬一瞬を噛みしめる者、後輩へと思いを託す者、感謝を演技にこめる者。最後のきらめきに、精一杯の拍手が送られた。
多くのフィギュアスケーターにとって、憧れる『王道』のスケート人生は、大学4年生まで競技を続け、1月のインカレや国体で有終の美を飾り、4月には就職して第二の人生へと進んでいく、というものだろう。毎年、インカレや国体は熱い応援合戦となり、涙無くして見られない試合となる。今季も、コロナ禍での無観客開催とはなったが、選手同士はリンクサイドに立ち、それぞれのスケート人生を讃え合う4日間となった。
日野龍樹も、今季での引退を決意したひとり
多くのファンを魅了してきた日野龍樹(26)も、今季での引退を決意したひとり。全国規模の大会はこの国体が最後となるため、全日本選手権後、ショートを2010-11、2011-12シーズンに滑った『ロシア水兵の踊り』に変更した。
「高校1、2年の時に、宮本賢二先生が最初に作ってくださった大好きなプログラム。色々な身体の動かし方を組み込んでくださったお陰で、シニアに上がったあとも色々な演技をできたきっかけになった曲なので、引退までにもう一回滑りたいと強く思っていました」
3回転ルッツを綺麗に成功。61.18点で6位につけた。するとインタビューに現れた日野は、自分の演技を振り返る以上に、同じ愛知県チームとして出場した後輩の様子を気に掛けていた。それは、山本草太(21)だ。
山本は、怪我と3度の手術を乗りこえながら、北京五輪への出場を目指している。今季は西日本選手権で優勝し底力を見せたものの、全日本選手権は9位。すると山本から日野に、ある連絡が来たという。
日野はこう語る。