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「イチロー・チルドレン」など続々放出…マーリンズ・ジーターCEOの“非情な改革”はいよいよ実を結ぶか
posted2021/02/19 11:00
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
Getty Images
例年以上に動きが鈍かったFA(フリーエージェント)市場も、キャンプインが近付くにつれ、ようやく活発に動き始めた。特Aクラスにランクされていた大物選手も次々に契約がまとまり、各チームの布陣も固まってきた。その中で、捕手ナンバーワンと評価されていたJT・リアルミュートがフィリーズと5年総額1億1550万ドル(約121億2750万円)、昨季ナ・リーグで打撃2冠のマルセル・オズナ外野手がブレーブスと4年総額6500万ドル(約68億2500万円)で、それぞれ再契約を交わした。
この2人に共通することと言えば……。
「元マーリンズ」。
2017年オフ、マーリンズの最高経営責任者(CEO)に就任したデレク・ジーター氏は、すぐさま大胆なチーム再建策に着手し、翌18年オフまで続々と主力選手をトレードで放出した。その中の2人が、リアルミュートとオズナだった。
元ヤンキースの主将で絶大な人気を誇ったジーター氏は、球界全体から注目される中、非情とも思える改革を進めた。かつての同僚で当時44歳となっていた盟友イチローと契約を延長しなかっただけでなく、伸び盛りの若手野手陣を惜しみなく放出した。17年12月から翌18年1月までわずか2カ月あまりの期間に、当時「リーグ最高の外野陣」と評され、「イチロー・チルドレン」とも言われた、オズナ、ジアンカルロ・スタントン(ヤンキース)、クリスチャン・イエリチ(ブルワーズ)の移籍交渉を締結させた。3人とも20代中盤で、チームの中軸として、ようやく認知されてきた矢先だった。
ファンから浴びた非難の声
当然、マーリンズファンからは厳しい非難が飛び交い、応援ボイコットの声すら聞かれた。「史上最悪のファイアー・セール」と怒りを隠さないファンに対し、ジーター氏は地元マイアミで対話集会を開き、自らの経営方針と考えを伝えた。
「私を信じてくれ、とは言えない。だが、あなたがたは、まだ私のことを知らない。信頼を得るためには時間がかかるものだ。険しい道のりになるだろうし、時間や努力が必要になる」
スモール・マーケットのフロリダ州マイアミに本拠地を置くマーリンズは、当時、赤字を抱えており、オーナーグループに属するジーター氏は、緊縮財政とチーム強化という、一見、相反するような命題と向き合っていた。現状の主軸選手を保持し続ければ、近い将来、必ず経営状態は悪化し、最終的に破綻する可能性は極めて高い。批判を覚悟で改革を断行するしかなかった。