フランス・フットボール通信BACK NUMBER
「才能は常にフィジカルに勝つ」最高峰のMFシャビが信奉し続ける攻撃的サッカーの根幹【ドリームチーム選出】
text by
ジェレミー・ドクトゥール&アントワーヌ・ブーロンJeremy Docteur et Antoine Bourlon
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/02/21 06:00
ドリームチームには守備的MFでの選出だが、実際にはセントラルMFのポジションでプレーすることがほとんどだった
シャビ たしかにあまたのチームが3人のセンターバックと2人のアウトサイドを配置している。とはいえ3バックを守備の安定のために採用しているチームと、攻撃をより流動的にするために採用しているチームを区別する必要がある。要は攻守のアプローチの問題で、どんなコンセプトに基づいているかが最も重要だ。ある者にとって3バックは中央の守備をより密にするためのものであり、別の者にとってはスピーディな攻撃を仕掛けるべく起点でも数的優位を作り出すためのやり方だ。重視すべきはシステムそのものよりもコンセプトなんだ。
――フィジカルに関してはより厳しくなったといえますか?
シャビ その点については今がピークに達したと思っている。サッカー選手である前に、アスリートであることを選手たちは求められている。フィジカルは大きく進歩した。スプリントの回数にしろ1試合の走行距離にしろ、これ以上選手が走ることなど不可能だ。その量といったら……11㎞は当たり前で12㎞や13㎞にも達するわけだから。もの凄いことだ。
それに走るだけじゃない。プレーのインテンシティも今はずっと高い。プレーのリズムを変え方向を変え強度を上げる……。フィジカルコンディションが最高の状態でなければ不可能だ。
スペクタクルは才能のなせる業
――あなたはかつてインタビューでこう言っています。「才能は常にフィジカルに勝つ。そうでない日がやって来たらとても憂鬱だ」と。そんな日が来るのも近いのではないですか?
シャビ そのことはずっと考えているけど、今も才能がフィジカルに勝つと思っている。理由は単純で、議論の中心には常にボールがあるからだ。どうやってボールを支配し、ゴールまで運ぶかを考える。そのために必要なのは才能だ。才能ある選手は、どんなときも自分を表現できる。彼らの存在なしにはスペクタクルはあり得ない。ただボールの後を追いかけるだけになる。スペクタクルとは適切なコントロールであり美しいキックだ。また違いを作り出すラストパスであり、鮮やかなフィニッシュであり、空中戦での見事な予測であり、洗練された守備のアクションであり……。すべては才能のなせる業だ。
――頻繁なトランジションとともにプレーはよりスピードアップしています。
シャビ 今は自陣でボールを取り返してから3~4秒で相手ゴールまで運ぶ。選手たちがカウンターアタックに殺到するのはサッカーの醍醐味のひとつだ。たしかにスピーディなトランジションから数多くのゴールが生まれている。とはいえカウンターアタックを仕掛けるべきか、あるいはいったんプレーを落ち着かせるべきかは、的確に判断する必要がある。逆にボールを失いそうな場面では、カウンターアタックを十分に警戒すべきだ。いずれにせよスピーディであるのはサッカーにとってポジティブなことだ。
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