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ACミランに移籍! なでしこジャパン・長谷川唯の何事もポジティブに楽しむ力
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph byKiichi Matsumoto
posted2021/02/17 11:00
ミスで落ち込む必要はない
代表に呼ばれると、今まで話したことがない先輩もいらっしゃいます。でも、私はサッカーが始まってしまえば大丈夫。先輩でも思ったことや、やってほしいことを全部伝えることができます。最初はお互いぎこちなくても、サッカーを介するうちに、どんどん仲良くなっていく。
だから自分がゴールを決めることよりも、自分のパスや動きによって誰かが点を取れたときの方がうれしい。ポジションの近い選手と「こういう連係をしたいね」と練習していたことが試合で発揮されたときなど、すごく細かいところで楽しさを感じることが多いですね。
もちろんミスをすることはあります。でもサッカーは90分勝負。90分もあるのだから、その中でミスをするのは当たり前のこと。90分あれば取り返すことだってできます。
それにチームとしてやりたいことをやって起こったミスは、ポジティブなミスで、それは次の成長につながると思っています。だから小さなミスで落ち込んだり、ガッカリする必要はないんです。
世界と戦える姿を子供たちに見せていく
チームで小学校などを訪問すると、身長についての質問がよく出るのですが、私は今の身長で満足しています。背が低いからこそ今のプレースタイルがあるし、今まで小さくて嫌だと思ったこともありません。
もちろん、ヘディングやボディコンタクトはやっぱり弱い。でも、そのぶん自分のいいところを強くしていけばいい。プラスの面を増やしていけば、マイナス面は見えなくなってくるもの。そうやってポジティブに考えることで、私のプレースタイルはできあがったし、むしろ背が大きくなくて良かったなって(笑)。
身長が小さくても世界と戦えるという姿を子供たちに見せていくことも今の自分の役目だと思っています。私を見て「自分もこうなりたい」と思う未来の選手が出てくるかもしれない。代表やメディアに出る立場の者として、言葉だけでなく、プレーでも伝えていきたいですね。
これから私はイタリアにわたってプレーをしていきますが、まずは外国の選手を相手に、日本でやっていたことがどれだけ通用するのかを確かめないといけない。通用しなかった場合には、同じレベルのプレーをできるように練習を含めて、チャレンジしていくだけ。
言葉や生活で難しいところもあると思います。でも楽しんでやっているサッカーなら、嫌なことがあっても頑張れる。難しい状況にいる時こそ楽しんで、しっかり試合に出て、いい結果を残したいと思っています。
長谷川 唯Yui Hasegawa
1997年1月29日、宮城県生まれ。幼少期に埼玉県戸田市に転居し、父と兄の影響によりサッカーを始める。小学生時は男子クラブチームに所属し、中学1年生で日テレ・東京ヴェルディベレーザの下部組織である日テレ・東京ヴェルディメニーナに加入。2013年からトップチームでなでしこリーグに出場。各世代の日本女子代表に選出され、U-17とU-20の女子W杯を経験。2017年のなでしこジャパン初招集後、相手を手玉に取るプレーや豊富な運動量で中盤の中心選手として活躍し、2019年女子W杯にも出場。ベレーザで数々のタイトルを獲得し、今年1月29日にイタリア・ACミランへの完全移籍を発表。
ナビゲーターの俳優・田辺誠一さんがアスリートの「美学」を10の質問で紐解き、そこから浮かび上がる“人生のヒント”と皆さんの「あした」をつなぎます。スポーツ総合誌「Number」も企画協力。
第147回:長谷川唯(サッカー)
2月19日(金) 22:00~22:24
サッカー女子日本代表の長谷川唯選手は高校時代から国内屈指の強豪日テレ・東京ヴェルディベレーザで活躍。司令塔として数多くのタイトル獲得に貢献しました。1月29日に迎えた24歳の誕生日にはイタリアのビッグクラブACミランへの移籍を発表。渡欧を前に「日本でやっていたことがどれだけ通用するのかを確かめながら、どんどんチャレンジしていきたい」と力強く語ってくれました。番組ではベストスコア243という趣味のボウリングに同行すると、彼女の意外な素顔が明るみに? また「早く結婚したいです」という言葉から、女性としての人生プランにも迫ります。
第148回
マンスリースペシャル
2月26日(金) 22:00~22:24
第145回から第147回までに登場した、ラグビー女子セブンズ日本代表として東京オリンピック出場を目指す大竹風美子選手、阪神タイガースでクローザーとして活躍し昨年現役を引退した藤川球児さん、先日イタリアの名門ACミランに移籍したサッカー日本女子代表の長谷川唯選手。第148回は未公開シーンを含む3人の総集編をお届けします。