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古田敦也に松中信彦…4人の「大物臨時コーチ」をキャンプ地に呼んだのは誰? 記者仰天の人事の思惑とは 

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小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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posted2021/02/11 17:05

古田敦也に松中信彦…4人の「大物臨時コーチ」をキャンプ地に呼んだのは誰? 記者仰天の人事の思惑とは<Number Web> photograph by Kyodo News

練習を見守るヤクルトの高津監督(左)と古田臨時コーチ。大物臨時コーチが野球界をざわつかせている

【3】阪神は「本社介入」の苦肉の策で

 同じ「本社主導」でも中日とは実態が大きく違うのが阪神だ。川相氏はOBではなく、現首脳陣との接点もあまりない。当然、立浪氏のように将来の指導者候補というわけでもないのだが……。阪神取材歴の長いライターが解説する。

「阪急阪神ホールディングスの上層部が、失策数のあまりの多さを問題視した。そうとらえて間違いは無いでしょう。選手の顔ぶれが変わらず、コーチもそのまま。リーグ優勝を逃す要因と言われる守備力を何としても強化しろと。その意を受け、球団が在野の守備の名手から人選したのが川相さんというわけです」

 阪急阪神ホールディングスの秦雅夫副社長は、野球通と言われている。昨シーズンは12球団最多の85失策を記録し、近年はワーストの常連である。チームの一軍には久慈照嘉(バント担当兼務)、藤本敦士(走塁兼務)という内野守備の専門家がいるが、本社は更迭も刷新もしない球団に業を煮やしたわけだ。本社主導というより「本社介入」。阪神らしい人事である。

【4】相容れぬ仲の井口と松中のタッグに仰天

 球界をざわつかせたという点では、松中氏を招いたロッテも負けてはいない。井口資仁監督と松中氏はダイエー時代のチームメート。当時をよく知る福岡在住の野球記者は、今回の人事に仰天していた。

「だって井口さんと松中さんが話しているところなんて、見たことなかったですからね。あの当時のダイエーを取材していた人間なら、みんな同じことを言うはずです」

 いわゆる「お友達内閣」と呼ばれるスタッフがあるが、2人はその逆で相容れぬ仲だった。だからこそこの人事は「現場主導」だと言い切れる。本社や球団がわざわざ臨時コーチで招くはずがない。打撃が本職といえる井口監督だが、現役時代は右打者。左の長距離打者だった松中氏の力を借りたかったのは、安田尚憲、藤原恭大の大器を何としても成長させ、共通の古巣であるソフトバンクを倒したい。松中氏の指導は好評で、任期はキャンプ終了後も延長されることが決まった。邪念も雑念もなく、純粋にその一点に集約されるということだ。

 人事の裏には必ず思惑が隠れている。なぜ? 誰が? 4人の大物にはそれぞれの事情があり、依頼されたミッションがある。短期間でめざましい成果があげられるかは別として、取材が制限される今年のキャンプでは、番記者にもうれしい話題となったのは間違いない。

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