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「東京では金メダルを!」「パリには選手生命すべてをかけて!」いまの日本人トップクライマーたちの熱い想い。
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph byIchiro Tsugane
posted2021/01/29 11:00
言い訳のできない環境をつくるために
昨夏に第一子が誕生した藤井は、2021年1月から新たな環境に身を置く決意を固めた。大学卒業後から勤めた大手クライミングジムを辞め、プロクライマーとして生きていく道を選択した心境をこう明かす。
「これから先の競技人生を考えたときに、ボクに残されている時間はそう多くないなと思ったなかで、オリンピックは次しかない状況になった。パリ五輪は選手生命すべてをかけて向かいたい。後悔のない満足した競技人生だったと言えるように頑張りたい。そのために言い訳のできない環境をつくりたかった」
もちろん、今大会を通じて先を見据えていたのは、野中、森、藤井の3選手に限ったことではない。
「スピードジャパンカップの優勝と、5秒9より速いタイムを出してA代表になって、W杯やロシアで行われる世界選手権で成績を残したい」
2021シーズンの抱負をこう語るのは、今大会で男子6位になった竹田創だ。パリ五輪から単種目になるスピードに照準を絞る竹田は、この大会のスピードは予選1位ながらも、決勝トーナメントは4位。右肘靭帯に故障を抱えていたとはいえ、目標のタイムも順位もクリアできなかった悔しさを、今シーズンにぶつける決意を明かした。この種目で成長著しい大政涼と切磋琢磨しながら、ここからの4年間でどこまでレベルアップしていけるのかは注目したいところだ。
藤井快と同じ28歳の樋口純裕は、今大会は複合2位。決勝のリードで完登して1位となったことで、4年後のパリ五輪からはリードとボルダリングの2種目になるコンバインド代表への欲も生まれたという。
「この2~3シーズン、リードで取り組んできたクライミング・スタイルの変更がようやく体にフィットしてきたんで、パリ五輪を狙いたい気持ちが少し出てきました。ボクの場合はボルダリングが課題になるので、そこを高めていければ。同い年の快(藤井)と一緒に頑張っていきたいですね」
今夏へ、3年後のパリ五輪へ。それぞれの選手が新たな目標に向かってスタートを切る2021シーズンは、1月30日(土)・31日(日)に東京・駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場で行われる『第16回ボルダリングジャパンカップ』で幕を開ける。
緊急事態宣言の期間中にあたるため、イベント開催制限に準じての実施が予定されている。今シーズンも難しい状況にあるものの、昨年末のCJCと同様に、大会が開催されるよろこびに満ちた選手たちが、晴れやかなパフォーマンスを見せてくれるはずだ。