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「東京では金メダルを!」「パリには選手生命すべてをかけて!」いまの日本人トップクライマーたちの熱い想い。
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph byIchiro Tsugane
posted2021/01/29 11:00
森秋彩「いい経験だと思って……」
一方、CAS裁定後は「裁定に納得できない部分もたくさんあって、心も体もコンディションがよくなかった」と明かした森秋彩は、今大会は予選3位で決勝に進んだものの、決勝は8選手のなかで最下位。とりわけ得意のリードで、まさかの高度10+でのフォールにより8位となったのが響いた。
「得意なリードで大きなミスをしてしまって。カッコいい課題だったからTOP(完登)したいと思っていたので悔しい。ただ、いままで大きなミスをしたことがなかったから、これもまたいい経験だと思って次に生かしたいと思います」
昨年8月のリードジャパンカップ以来となった公式大会出場は不本意な結果に終わったが、大会後の森は「リフレッシュになった」と前を向いた。
「まだ完全に切り替わってないですが、決まったものは変わらないし、いつまで引きずっていても今後の自分のパフォーマンスにいい影響を与えることはないので。久しぶりの大会は緊張したけど、楽しめました。パリ五輪のコンバインドはリードとボルダリングの2種目になるので、苦手で嫌いなスピードが外れるのは自分にとっては有利だなと思っているので、ポジティブにやっていこうと思っています」
藤井快「優勝するつもりで臨んだ」
男子は予選を2位で通過した藤井が、決勝はスピードで5位と出遅れたものの、ボルダリングで1位、リードで3位となってCJC初優勝。「優勝するつもりで臨んだので、いまは素直にホッとしています。来年からはパリ五輪に向けて頑張りたいと思います」とコメントした。
「コロナ禍のなかでギリギリのモチベーションでやってきたので、いきなり目指していた五輪の道が途切れて、何のために練習しているかブレましたし、体が動かないこともありました。ただ、いまはボクのなかでケリはついています」
スポーツクライミングが東京五輪の実施種目に決まってからの日々で楢﨑智亜とともに男子を牽引してきた第一人者にとって、CAS裁定への思いが燻っていないわけはない。だが、それをグッと飲み込んで前向きなコメントを残せたのは、3年後に向けての新たな覚悟が決まっているからだ。
「いまは次のパリ五輪に向けて、競技人生の集大成にしたい思いがすごく強い」