濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
武尊vs那須川天心は実現なるか 「自分より強いって言われてるヤツがいるのが許せない」
posted2021/01/06 17:02
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
インタビュースペースの“模様替え”を見たのは、これがたぶん初めてだった。
昨年大晦日の『RIZIN.26』さいたまスーパーアリーナ大会である。その少し前、セミファイナルが始まる直前にK-1王者の武尊がリングサイドに現れ、格闘技ファンを騒然とさせていた。
彼が間近で見たのは那須川天心の試合だ。言うまでもなく、那須川と武尊の試合はこの5年間熱望され続けている。那須川が初めてリング上から対戦をアピールしたのは2015年のことだった。
昨年の大晦日、那須川が闘ったのはムエタイのランカーであるクマンドーイ・ペットジャルーンウィット。パンチを効かせて判定勝ちしたものの、本人としては満足できる内容ではなかったという。カード発表は12月22日。実際にはそれより前に決まっていたわけだが、お互いにとって十分な準備期間とは言えなかった。
それでも結果はきっちり残すのが那須川の強さだ。クマンドーイは本来、下の階級であり、RIZINのキックルールはヒジ打ち禁止などムエタイと大きく違う。来日後の隔離期間も必要だった。そうした点がある割にはクマンドーイが善戦したとも言える。“ムエタイの殿堂”ラジャダムナン、ルンピニー両スタジアムのランカーに対しても、那須川は“格上”の存在なのだ。普通のキックボクサーなら、ルールや条件はどうあれタイ人に勝つだけでも大変なのだが。
「本当に強い選手。早くリングで向かい合いたいです」
「本当に素晴らしい選手だと思いました。今日の試合はKOではなかったんですけど、天心選手の強さが出ていて。今まで見たことない選手だなと。本当に強い選手だと思います。早くリングで向かい合いたいです」
試合を見届け、リングを降りた那須川と拳を合わせると言葉を交わした武尊は取材陣に語った。どこで語ったのかといえばインタビュースペースだ。リングサイドに現れたのもインタビュースペースでのコメントもRIZINの許可なしではあり得ない。言わば“公式”の出来事。武尊来場は、単なる彼の“フライング”ではなかったということだ。