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プロ野球・契約更改の“珍要求” ソフトバンク1年前「シャワー改善して」→今年は「ポスト熱男どうするの?」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2020/12/25 17:03
06年にソフトバンク入りした松田宣浩37歳。来季はプロ16年目となる
「ポストといってもポジションがどうではなくて、ここ数年のあいだチームの先頭に立って、チームのことを考えて引っ張っているメンツがかわっていない。そういう選手を早く見つけていかないといけないという話をしたんです」
会見後の取材でもそれについて、さらに持論を加えた。
「練習の声とか僕らの世代がいまだにやっている。そういうのは次の世代にも、しっかり受け継いでいかないといけない。正直、若手は足りていない。試合中にベンチから離れて戻ってくると、静かな時があった。しっかり声を出すのも野球選手としては活躍する大事なところだと思う」
「無意識ですよ」先頭に立つベテラン勢
現在のホークスの強さを語る上で、千賀滉大の剛速球と柳田悠岐の豪快フルスイングにも引けを取らないくらい、ベテランの存在が際立っている。常に雰囲気がよく、いつも声が出ている。工藤公康監督は「うちは負けている試合でもベンチのムードが変わらない」と胸を張る。それを牽引しているのが松田であり、同じ37歳の川島慶三だ。
たとえば、練習時のシートノック。各ポジションの1番目に打球を受けるのは若い控え選手で、レギュラーのベテランはちょっと威厳を示すように後ろでドンと仁王立ちするのが球界の図式だ。学生野球でも上級生と下級生で同じ構図ではなかろうか。
しかし、松田は若手よりも率先して前に出てボールを捕りに行く。もちろん、誰よりも大きな声を張り上げて。
「無意識ですよ。自分の勝ちとったポジションを守ろうと思ってやっているんだし、わざわざ譲る必要はないでしょ」
試合前のウォーミングアップの隊列でも松田は先頭に立つ。一番前にいるから当然少しも手は抜けない。
また、日本シリーズ前の練習期間ではこのようなシーンを目撃した。シート打撃の時間。この時はセカンドを守っていた川島から「ここは2アウト一塁の想定ですけど、ゲッツーとりに行っていいですか?」との声がベンチの方に投げられた。もちろん首脳陣はそれを了承。ただ指示を待つのではなく、選手自らが考えながら野球をやる。そんな姿勢を若手たちは目の当たりにしているわけだ。
「打率.228&13本塁打」衰えを指摘する声も…
ただし、かくいう松田も「『ポスト熱男』だけど、ポジションはね。まだまだ負ける気もないし、勝負もしたい」と言葉にも熱を込める。