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不満があればサインは… 巨人菅野智之(31)らポスティング組が「参考にすべき」2人の先輩とは
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byNanae Suzuki
posted2020/12/26 17:05
ポスティングによるメジャー移籍を目指す巨人・菅野智之投手
ポスティングでメジャーに行けなかった岩隈
菅野投手が31歳だと聞いて、最初に思い出したのは、今季限りで引退した同じ投手で元同僚、岩隈久志氏のことだった。
岩隈氏はメジャー1年目の2012年に菅野投手と同じ31歳になっているが、その1年以上前、楽天時代の2010年オフにはポスティング制度を利用してのメジャー移籍を目指しながらも実現しなかった。交渉権を獲得したアスレチックスと交渉期限の12月7日までに、契約合意に至らなかったのだ。
そこで1年後の2011年オフ、今度は海外FA権を取得して「メジャー移籍」を目指し、マリナーズと単年150万ドル+出来高で契約している。それは前年、アスレチックスが提示したとニュースになった「4年1525万ドル」には遠く及ばない“悪条件”に思えたが、FAでの移籍だったため、入札金(譲渡金)が発生するポスティング制度による移籍では普通になっている「複数年契約」に縛られなかったことが後々、追い風になった。
メジャー1年目の2012年、岩隈氏は中継ぎから頭角を現して先発に定着し、後半戦は同年のサイ・ヤング賞投手、左腕デビッド・プライス(当時レイズ、現ドジャース)に次ぐリーグ2位の防御率2.50を記録。当時の「マリナーズの顔」フェリックス・ヘルナンデス(今季ブレーブス。現FA)が2005年に記録した2.67を上回る球団新人記録を達成するなど、オフに2年総額1400万ドルの契約を勝ち取った。
さらに2013年はリーグ7位の14勝を挙げてリーグ3位の防御率2.66、日本人歴代1位となるリーグ2位のWHIP1.01を記録するなどして、サイ・ヤング賞投票でマックス・シャーザー(当時タイガース、現ナショナルズ)とダルビッシュ有(当時レンジャーズ、現カブス)両投手に次ぐ3位に食い込む。翌2014年も15勝目を挙げるなどしながら前年からの合計350投球回に到達して3年目の球団オプションを自動更新。単年700万ドルの契約を手にしている。
そう、岩隈氏はポスティングによるメジャー移籍が実現せず、FAで単年契約しかできなかったのに、その「勝負の一年」でしっかり結果を残して、交渉決裂したアスレチックスが提示したのを大きく上回る契約を、自らの力で掴み取ったのだ。
適齢期を超えてからメジャー挑戦した黒田
「金じゃないんだ。育ててもらった球団への恩義を示したい」ということなら、黒田博樹氏(元広島)のケースを考えて欲しい。
黒田氏のメジャー移籍の可能性が大きく報じられたのは、2006年の夏に国内FA権を取得した時だった。