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男子チームに移籍して注目された元なでしこジャパン・永里優季が切り拓く自分だけの道 

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林田順子

林田順子Junko Hayashida

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2021/01/06 11:00

男子チームに移籍して注目された元なでしこジャパン・永里優季が切り拓く自分だけの道<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

チャレンジを続けるのは、自己成長のため

 この考えは代表から離れて、アメリカのチームに移籍してからどんどん強くなっていったと思います。自分の内側に価値を求められるようになって、自分が何に喜びを感じて、どういうプロセスに幸せを感じるのかにフォーカスできるようになった。結果を追い求めていた時代よりも、サッカーを楽しめるようになりました。

 私はものすごくシャイで人見知りなので、本当はあまり人と喋りたくないのですが(笑)、移籍したときは、新しい人間関係を作るためにすごく意識をして、積極的に話しかけるようにしています。

 どうしても自分の良さを知ってもらいたいと思ってしまいますが、そのためにはまず、相手に「私はあなたに興味を持っている」と示すことが大事。それが信頼関係におけるベースになると経験を通じて知りました。人は自分に興味を持ってくれていると思うと、心を開いたり、正直に話してくれるようになる。いろいろな経験をしてきたので立場が上に見られることもありますが、オープンにコミュニケーションを取れるような雰囲気作りや、フラットな関係で接してもらえるような絡み方を心がけています。

 苦労することも多いですが、それでもチャレンジを続けるのは、自己成長のため。

 同じ業界、環境、組織にいるとどうしても立場や役職に甘んじたり、マンネリ化してしまう。高い課題を設定しなくても、生き続けられる世界でもある。そうならないためにも自分で常に新しい課題を設定して、テーマを持って、そこにフォーカスを当てて、自己成長をも楽しんでいくというプロセスを大切にしています。今では、これが私のモチベーションになっていますね。

自分にとって何が一番大切なのか

 だから東京オリンピックについては、全く考えていません。選ばれるかどうかは別として、出なくてもいいかなという感じ。

 昔はオリンピックにすごく価値を感じていましたが、いろいろな景色を見てきて、いろいろな場所や環境でいろいろな経験をして、自分の中での価値観が変わって、今はオリンピックに価値を感じられなくなってしまった。むしろ、今の自分がエネルギーも時間も注いでやっていることにものすごく価値を感じているんです。もっと楽しいこと、面白いことをしたいという気持ちの中にオリンピックは入らなくなってしまったんですね。

 結局、自分にとって何が一番大切なのかということ。自分の内側に軸をちゃんと持っていれば、オリンピックも男子チームも、周りがどうであろうと、ぶれずにいられる。自分の中に評価基準がちゃんとあれば、周りの評価を気にすることなく、自分を評価してあげることができる。それが大事だと思っています。

永里優季

永里 優季Yuki Nagasato

1987年7月15日、神奈川県生まれ。小学1年の時に兄の影響でサッカーを始める。2004年に16歳で日本女子代表デビュー。22歳となった2010年にはドイツの1.FFCトゥルビネ・ポツダムに移籍し日本人で初めてUEFA女子CL優勝を果たした。2013年にはリーグ得点王に輝く。代表では2011年W杯優勝、2012年ロンドン五輪銀メダル獲得に貢献するなど132試合に出場し歴代2位の58ゴール。現所属はアメリカのシカゴ・レッドスターズだが、2020年9月に男子チーム(神奈川県社会人2部リーグ・はやぶさイレブン)へ期限付き移籍し世界を驚かせた。ポジションはFW。

ナビゲーターの俳優・田辺誠一さんがアスリートの「美学」を10の質問で紐解き、そこから浮かび上がる“人生のヒント”と皆さんの「あした」をつなぎます。スポーツ総合誌「Number」も企画協力。

第141回:永里優季(サッカー)

1月8日(金) 22:00~22:24

女子サッカーの永里優季選手は黄金期のなでしこジャパンでエースとして活躍。33歳となった今でも「新しい課題を常に設定していくことが大事」とまだまだ進化を求める日々を過ごしています。2020年には男子チームに加入して話題を呼びました。体格や体力に勝る男子との戦いでも「全くかなわないという感覚はなかった」と振り返ります。前代未聞の挑戦で得たもの、そしてその先に見据えるものとは? 番組では趣味のドラムを楽しむ彼女のプライベートにも密着。「ドラムにサッカー選手としての成長を促進してもらった」と語る真相に迫ります。

第142回:小椋久美子(バドミントン)

1月15日(金) 22:00~22:24

元バドミントン日本代表の小椋久美子さんは「オグシオ」の愛称で親しまれた潮田玲子さんとのコンビで、2008年北京五輪5位入賞、全日本選手権5連覇を果たすなど輝かしい活躍を遂げ、バドミントンを一躍人気スポーツに押し上げました。2010年に現役を引退し、現在は解説や子供たちの指導・育成などに力を注いでいます。番組では最近飼い始めた愛犬・かりんちゃんも登場。散歩の時間が自分のことを見つめる時間にもなっているという彼女が、こんな時代だからこそ伝えたいこととは。「苦しい時にこそ伝えることがある」と語る真意に迫ります。

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