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男子チームに移籍して注目された元なでしこジャパン・永里優季が切り拓く自分だけの道
posted2021/01/06 11:00
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph by
Kiichi Matsumoto
10年ぐらい前から男子チームでやってみたいと思っていました。
どうしてもフィジカルやスピードの差にフォーカスされがちですが、サッカーはそれが全てではありません。むしろほんの一部にすぎない。
サッカーは人間性が出るスポーツです。例えばポジショニングにしても、味方のプレーを活かすためなのか、ゴールに直結させるためなのか、はたまた自分のミスを隠すためなのか、自分をよく見せるためなのか。ひとつのアクションからいろいろなことがすごく読み取れる。人の感情や行動、思考が全て詰まっているのがフィールドなんです。
そういうフィジカルやスピードではないところで、十分勝負できるし、そこには男女の壁はありません。十分にチームの一員として能力を発揮できるという感触がありました。
ただ、このチャレンジで得たものは正直、まだ何もありません。最後の試合が終わった後も、自分の中で咀嚼し切れていない部分があったし、ここから何を学んで、何を得たんだろうと考えても、具体的なものがまだ出てこない。多分それは、この経験を過去の経験としか比較できないからだと思います。来年アメリカに戻って、新しい環境で自分がプレーをしたときに、この経験で得たものに気づかされていくのではないでしょうか。
サッカー人生で一番悔しかった出来事
いろいろなチームでプレーをしてきましたが、最初に海外に移籍しようと決意をしたのは、2008年の北京オリンピックがきっかけでした。
準決勝と3位決定戦で敗れて、そこで初めて世界との差や自分の力のなさを感じました。技術も、パワーも、スピードも日本国内では体験できないものがそこにはあって、何も通用しなかったという喪失感だけが残った大会でした。
私は、悔しさを感じた後に、自分がどんな行動をしたかで、その悔しさの大きさが測れると思っています。そういう意味で日本を出て海外でプレーしようと初めて決意したあの北京は、私のサッカー人生で一番悔しかった出来事だと思っています。
海外でプレーするようになって、サッカーの本質を自分なりに考えるようになりました。
25歳ぐらいまでは、数字や結果に執着して追い求めるタイプでした。ゴールが決まればどんな形でも良いと思っていたし、それで目標だったタイトルも取ることができましたが、ものすごく苦しい時間も長かった。
逆に、今はたまたま成功したプレーやゴールは、あまり好きではありません。それよりも自分が意図してちゃんと積み重ねてきたものが試合で形になった方がうれしい。それが結果的にゴールに結びつかなかったとしても、再現性が高いし、価値があると思っています。