Number ExBACK NUMBER
「自分の偽物感はぬぐえなかった」芸歴31年目のウエンツ瑛士が初めて明かす“海外挑戦”を決断した日
posted2020/12/22 11:02
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Shigeki Yamamoto
日々の鍛錬のもと、記録や勝敗という結果に挑戦し続けるアスリート。「Number Web」には、数多くのスポーツ選手たちの心情が紹介されてきた。
その場所になぜ、ウエンツ瑛士さんが登場するのか。彼もまた、日々の仕事にストイックな姿勢で取り組み、戦っており、特に芸能界では珍しいことに1年半に及ぶイギリス留学を実行した姿は、現状に満足せず、さらなる何か、新しい自分を求めて海外へ挑戦する多くのアスリートと重なった。
これまで、アルゼンチンの高原直泰をはじめ、中村俊輔や中田浩二、松井大輔、長谷部誠、岡崎慎司、内田篤人など数多くのサッカー選手の「海外挑戦」を追い続けてきた。そこにはいつも、それぞれの大きな葛藤や決断があった。果たして異業種における「海外挑戦」はどのような決断のもとに行われたのか――。4歳から始まり、マルチタレントとして活躍してきたウエンツさんに聞いた。(全3回の1回目/#2、#3へ)
◆◆◆
1985年、ドイツ系アメリカ人の父と日本人の母のもと、東京都に生まれたウエンツさんは、4歳でモデルデビュー。9歳のときにはミュージカルの舞台に立ち、『天才てれびくん』(NHK)にも出演。ダンサーや役者など活動の幅を広げた。しかし、芸能界で仕事を続けるかはまだわからなかった。
大学を卒業して一般企業で働きたいと考え、進学校に通いながら仕事を続けた。有名私立大学を受験するものの、高校の出席日数が問題となり、合格できなかったという。
“本物”と仕事をしながら「自分は違う」
――会社員になりたかったというのは、意外でした。
ウエンツ 努力してもそれが必ず報われる世界じゃないし、簡単に仕事もなくなってしまう。そこに一生を託すというふうには考えられなかったんです。もちろん、会社員だって一生安泰というわけじゃないんですけど……。
――芸能界で活動していくことに不安があった?
ウエンツ 単純に仕事がずっと続くとは思えなくて。芸能界には「○○をやりたい!」と意欲にあふれた人がたくさんいます。小池徹平(ウエンツさんとWaTというシンガーソングライターデュオを結成)もそうで、貪欲というか、モチベーションが強いんです。近くにそういう人間がいるなかで、僕はそういうものがないなと。
――お芝居とか歌を歌うとか、お仕事自体に違和感があったわけではないんですね。
ウエンツ 歌もお芝居も好きだし、目立つことも好き。学園祭でライブをするのも楽しい。でも、そういう気持ちと芸能界で活躍するというのは、まったく違うじゃないですか。子どものころから一流の、“本物”と仕事をさせてもらって、「自分は違う」って明確にわかったんです。自分の偽物感はぬぐえなかった。