第97回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
青山学院大学は「駅伝力」で連覇を狙う。2年ぶりの優勝奪還へ4年生が引っ張る東海大学。
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箱根駅伝2021取材チームhakone ekiden 2021
photograph byYuki Suenaga
posted2020/12/25 11:00
青学大の主将・神林は全日本大学駅伝7区区間賞と貫禄を見せた(左)。東海大・両角監督が重視する4区は前回2区の塩澤が走るか。
東海大学
第96回箱根駅伝(前回大会):総合2位
8年連続、48回目
「重要ポイント」4区に信頼の厚い選手を置く。
文=佐藤俊
「黄金世代」が卒業した後の東海大学は、厳しくなる。
そういう声が今季前、非常に多かった。確かに前回の箱根駅伝は、鬼塚翔太(1区)、西川雄一朗(3区)、館澤亨次(6区)、小松陽平(8区)、松尾淳之介(9区)、郡司陽大(10区)の6名が出走した。關颯人や阪口竜平というエース級が不在だったが、それでも総合2位につけた。16名のエントリーメンバーの内、4年生は8名が登録されており、彼らは他校にとっては非常に気になる存在で、その威圧感、脅威は非常に大きかったと言える。
両角速監督にとってはその「黄金世代」が卒業した後の選手層の底上げが、今季の最大のテーマだった。コロナ禍の影響で選手は寮を離れて帰省するなど、強化が思うように進まないこともあったが、夏合宿から巻き返した。そこで力を発揮したのが、4年生の主将・塩澤稀夕、名取燎太、西田壮志の「黄金トリオ」だ。
「今季は、選手層の底上げが課題だった。そのために4年生が中心になって、下級生のフォローを例年以上にやった。練習でも普段の生活でも、声をかけて、少しでも成長できるように、心がけてやってきました」
西田がそう語るように、今季は4年生のフォローが非常に効果的だった。
「声をかけてもらった」「大きな存在」
夏合宿などのポイント練習では西田が1本目を引っ張り、2本目は一番後ろについて声掛けをしたり、全体を見た。最後は遅れてしまう選手が出てくるが、そういう時は声かけをして脱落者を出さないようにした。そうして練習後、気になったところを下級生たちにアドバイスした。
「後輩は鬱陶しいと思っていたかもしれないですけど、真面目に聞いてくれた。それを続けていくことで成長し、チームがすごくいい感じに仕上がっていくのを感じました」
西田の思いは、後輩たちに伝わっていた。
全日本大学駅伝で学生駅伝デビューを果たした本間敬大(3年)は、「いつも練習で遅れてしまうところを塩澤さん、名取さん、西田さんに声をかけてもらってやり切ることができました。そうすることでやれる自信がついて、諦めないという気持ちが身についた」と語った。
石原翔太郎(1年)も「4年生が練習面、生活面でも引っ張ってくれたので、僕たちはそこについていった感じです。4年生は、大きな存在でした」と、4年生の力の大きさを感じたという。
4年生の献身的かつ引っ張る姿勢が下級生に刺激を与え、中間層の選手のレベルアップにつながった。チーム全体の走力を上げるために互助努力がなされ、「仲間のために」というムードが昨季以上にチーム内に深く浸透し、一体感が増したのだ。