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「“殺してやる”と罵られても」「ジェフは酷いということか」オシムや悪童FW、年俸120円Jリーガーの本音<2020名言&珍言>
posted2020/12/28 06:01
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Takao Yamada/Takuya Sugiyama
<名言1>
俺にとってのプレッシャーとは、周囲で銃撃戦が起きているあばら家で、怖さとひもじさに震えながら、横になっても全く眠れない夜のことを言うのさ。
(エメルソン/NumberWeb 2020年5月13日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/843494
◇解説◇
エメルソンはコンサドーレ札幌に始まり、川崎フロンターレ、浦和レッズなどで恐ろしいほどの決定力を発揮し、2000年代前半のJリーグを震撼させた。ただその一方で10代からの年齢詐称疑惑、唐突すぎるカタール移籍、そして母国ブラジルでも所属クラブの宿敵の応援歌を熱唱して“戦力外”になった。
とにかく問題児だった男だが、今年5月での直撃取材では「若くして日本へ渡ったわけだけど、この選択は俺にとって大正解だった。日本人は皆、とても礼儀正しくて、他人への思いやりがある。日本で過ごした5年半で、俺は選手としても人間としても大きく成長した」とJリーグへの感謝、そして突然日本から去ったことへの謝罪を口にしていた。
そんなエメルソンが語ったのは、自身の生い立ちについてだ。決して裕福とは言えない環境で、銃声が聞こえるような治安の悪い街でサバイバルしてきた。生きるか死ぬか――そんな幼少期の経験が、エメルソンのメンタリティーを育んだ。
「狂ったような形相の相手サポーターに『殺してやる』と罵られたところで、本当に殺されるわけじゃない。きれいな芝生の上で、真新しいユニフォームを着て、数万人の観衆の前でフットボールができる。そんなの、俺にとってはプレッシャーでも何でもない」
一般社会において、エメルソンが成長した環境は決して幸福とは言えないだろう。しかしその中で研ぎ澄まされた本能が、彼独特の得点嗅覚を生んだことだけは確かである。