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【悼む】史上最強ブラジルを葬った“死刑執行人”ロッシ、64歳の早すぎる死 王国に与えた甚大な影響とは 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byGetty Images

posted2020/12/16 11:03

【悼む】史上最強ブラジルを葬った“死刑執行人”ロッシ、64歳の早すぎる死 王国に与えた甚大な影響とは<Number Web> photograph by Getty Images

当時「黄金の中盤」と称されたセレソンをハットトリックで撃破したパオロ・ロッシ。これぞイタリアのストライカーという佇まいだった

 そして迎えた7月5日、準決勝進出をかけてイタリアとブラジルが激突した。イタリアにとっては中5日、ブラジルにとっては中2日の試合で体調面ではイタリアが有利だったが、得失点差で優るブラジルは引き分けでも勝ち上がれる。イタリアがベスト4へ進むには、勝つしかなかった。

 イタリアは右SBクラウディオ・ジェンティーレをジーコのマンマークに付け、守備を固めてカウンターを狙う。

隙をついてゴールを陥れたロッシ

 前半5分、イタリアが左へ展開し、カブリーニからのファーサイドへのクロスをロッシが頭で叩き込んで先制。彼にとって、これがこの大会での初ゴールだった。

 ブラジルも反撃する。7分後、ソクラテスからのパスを受けたジーコがジェンティーレをかわし、縦へ走るソクラテスへ右足アウトサイドで絶妙のスルーパス。ソクラテスがGKディノ・ゾフの意表を突いてニアサイドへ蹴り込んで追いついた。

 しかし25分、イタリアは敵陣でトニーニョ・セレーゾの不用意な横パスをロッシがさらうと、ドリブルで持ち込んで右足で鮮やかなミドルシュートを決めて再びリードする。

引き分けでOKでも勝利を狙ったブラジル

 その後は一進一退の状況が続いたが、後半23分、ブラジルが再び追いつく。ゴール前右サイドでファルカンがパスを受けると、前半のミスを取り返そうと右前方へ懸命に走り出したトニーニョ・セレーゾを囮に使ってフリーになり、左足アウトサイドで叩き込んだ。

 ブラジルは引き分けで十分。しかし、ここがいかにもブラジルらしいところなのだが、あくまでも勝利を狙って攻め続け、それが裏目に出る。

 29分、イタリアが右CKのチャンスをつかみ、ブラジル守備陣が跳ね返したところをタルデリがミドルシュート。これをゴール前にいたロッシが咄嗟に触ってコースを変えると、GKバウジール・ペレスは為す術がなかった。

 ロッシのハットトリックでブラジルを3-2で下して勢いに乗ったイタリアは、準決勝でもロッシの2得点でポーランドに快勝。決勝でもロッシが先制点を決め、西ドイツを下して44年ぶり3度目の優勝を遂げた。

 ロッシは、2次リーグのブラジル戦以降の3試合で6得点をあげ、大会得点王とMVPに輝いたのだった。

【次ページ】 「もっと守備を重視すべき」の声が強まる

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