濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“三沢光晴カラー”を身にまとい…ノア・潮崎豪、“もどかしい存在”からGHC6度防衛「名門復興」の象徴に
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byプロレスリング・ノア
posted2020/12/13 11:02
12月6日の杉浦貴戦でGHCヘビー級6度目の防衛を成し遂げたプロレスリング・ノアの潮崎豪。1年を通してベルトを守った
潮崎の緑のコスチュームは“正当後継者”宣言
そして2020年1月4日、潮崎は長期防衛を続けていた新世代の旗手、清宮海斗を下してGHCヘビー級チャンピオンとなる。観客は彼の新しいコスチュームを見ただけで沸いた。緑色を基調にしたものだったからだ。緑は三沢、さらにはノア自体のイメージカラーだ。すでに清宮も緑がベースのコスチュームを使っていたが、潮崎は“被る”ことを厭わなかったわけだ。コスチュームそのものが“正統後継者”宣言のようなものだった。
清宮を下したフィニッシュはムーンサルト・プレス。若手時代の得意技であり、かつて付き人を務めた小橋建太の必殺技でもある。ここにもはっきりとした意思表示があった。チャンピオンとしての決め台詞は極め付けである。
「I am NOAH」
俺がノアだ。潮崎がそう言ってくれる時を誰もが待っていた。自分より若いチャンピオンからベルトを奪ったのも大きかった。“譲られた”のではなく自分の力で“奪った”ノアの頂点だった。清宮がチャンピオンとして確立していたからか、時代が逆行するようなイメージもなかった。
“三沢最後の対戦相手”齋藤戦は通過儀礼だった
サイバーエージェント体制初年度のノアはコロナ禍でも積極的に動き続けた。潮崎はそれをチャンピオンとして引っ張っていく。
初防衛戦は3月29日、後楽園ホールでの無観客試合だった。ノアにとっては“異物”とも言える藤田和之と対峙した潮崎は、実に30分以上にわたる睨み合いを展開する。代名詞である豪腕ラリアットで3カウントを奪ったタイムは57分47秒だった。異色、あるいは“異形”か。前代未聞の視殺戦は大きな話題を呼んだ。
6月14日に放送されたABEMA無観客大会では齋藤彰俊を相手に2度目の防衛。齋藤は言うまでもなく“三沢最後の対戦相手”だ。6月14日は潮崎が初戴冠した日でもある。この試合は「I am NOAH」としての、いわば通過儀礼だった。