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「つぶしてしまったんだよ」消えた“スポルティング移籍”の裏で、松井大輔が語った「怒りと謝罪」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byYOKOHAMA FC
posted2020/12/14 17:02
ベトナムのサイゴンFCへ移籍を発表し、セレモニーに臨んだ松井大輔
「力が入っていない挨拶。自然体でつかみどころがない」
12月5日の試合後に行われた移籍セレモニーでの松井について、試合中継の解説を務めた福田正博氏もそう語っていた。
ベトナムでも、クラブのためにプレーする。そのうえで、「ベトナムと日本との懸け橋になりたい」と語った。その理由は10年前の出会いにあった。
「ル・マンへ行った当時、日本食レストランがなくて、ベトナムの人がやっている中華料理屋へよく通っていた。そこで働くヤンさんには、本当にお世話になった。友だちもいなくて寂しかったときに良くしてもらい、その店でフランス人の友だちができたのもヤンさんのおかげ。今回、ベトナムに行くことで、ヤンさんへの恩返しができると思っている」
紡いだ絆が縁となって、繋がっている
優しい表情で話す松井は、数々の街でサッカーだけでなく「暮らし」を満喫してきた。そうして、ピッチやクラブハウス以外で紡いだ絆が縁となって、繋がっている。そして彼の挑戦も続いていく。
「昨日、眠れなかったので、紙に書いたものを読みます」
セレモニーのスピーチ冒頭でそう説明した。いわゆる遠足の前日に寝付けないという状態だったのだろう。
「移籍するときに、大変だと思ったことはない。いつもワクワク感しかない。楽しいことしか思いつかないから」
選手としてのキャリアは終盤に差し掛かっているのかもしれないが、彼の心は踊っている。
「失敗しようが、怪我をしようが、行くことに意義がある。チャレンジすることに。年齢と経験が重なって、(今までと)違うものが見られると思う」
松井と同じ30代後半に鹿島アントラーズに移籍加入したジーコのように、サイゴンFCで、そして、ベトナムに足跡を刻んでほしい。
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