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「1億円プレイヤー」とプロ野球の年俸高騰 昭和の頃はサラリーマンと大差ない年収も…FA制度が原因か 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byNanae Suzuki

posted2020/12/11 11:02

「1億円プレイヤー」とプロ野球の年俸高騰 昭和の頃はサラリーマンと大差ない年収も…FA制度が原因か<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

FA移籍して2019年から巨人の一員となった炭谷銀仁朗

高額報酬の意味を理解されるようになった

 ノブレス・オブリージュという言葉がある。ステイタスの高い者は、率先して社会のために動かなければならないということだ。こうしたプロ野球人の社会貢献は、彼らが高額の報酬を得ている意味を十分に理解していることを表している。

 トップ選手がこのような行動をすれば、それに続く若手選手も見習う。そういう形で、プロ野球選手たちの行動は、以前に比べて大きく変化した。

 もちろん、中にはギャンブルに狂って破産したり、豪遊の挙句、身を持ち崩したりする選手もいる。しかし今やそういう選手は少数派であり、多くは堅実な家計を築いている。

 堅実な生活をしているからと言って、選手として「面白くない」わけではない。体調管理もしっかりしてより長く、高いパフォーマンスを見せる選手が増えている。

 いろいろなことを勘案すれば、私は「プロ野球選手が高額年俸を得ることは、いいことだ」と思っている。

FAで移籍すると年俸は高騰する

 ただ、日本独自のFA制度のために、選手の年俸がアンバランスになっているのは気になる。

<2018年の巨人、捕手陣の年俸と昨年の成績(炭谷は西武時代)>

阿部慎之助 1億6000万円
(39歳・49安打11本 打率.247)
炭谷銀仁朗 1億5000万円
(31歳・32安打0本 打率.248)
小林誠司  6000万円
(29歳・58安打2本 打率.219)
大城卓三  2000万円
(25歳・49安打4本 打率.265)
宇佐見真吾 1600万円
(25歳・5安打0本 打率.104)
岸田行倫  1080万円
(22歳・一軍出場なし)
田中貴也  540万円
(26歳・0安打0本 打率.000)
高山竜太朗 370万円
(23歳・一軍出場なし)
広畑塁   260万円
(23歳・一軍出場なし)
小山翔平  250万円
(22歳・一軍出場なし)

 西武から移籍した炭谷は昨年32安打で本塁打も0だったが、年俸は今季から捕手登録に復帰した球史に残る大捕手阿部とほとんど変わらず。正捕手の小林の2.5倍。安打数も本塁打数も上の大城の7.5倍。

 炭谷銀仁朗は、FA移籍によって、3年4.5億円という大型契約を結んだからだが、本来は正捕手小林の「刺激剤」だったはずの炭谷が、本命選手の小林よりもはるかに年俸が高くなった。

 日本のFA制度は、MLBのように「年限が来れば自動的にFA」ではなく、「FA宣言」する必要があるために、毎年数人しかFA権を行使しない。このために一握りのFA権を行使した選手の年俸が跳ね上がってしまうのだ。炭谷が悪いわけではないが、実力の世界であるプロ野球では、実績によって累進的に年俸が並ぶことが望ましい。

 このあたり、NPBは改善の余地が大いにあると思う。FA宣言なしにすべての選手がFAになるほうがいいと思うが。

【次ページ】 ファンが選手を特別視する根拠でもある

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