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生涯賞金22億超なのに「自分にはゴルフのセンスがない」片山晋呉のYouTubeが人気な理由
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2020/11/30 11:01
プロゴルファーのYouTubeチャンネルの中でも突出した登録者数を誇る片山晋呉。的確な技術論は多くのアマチュアゴルファーの拠り所になりつつある
どうすればセンスがある人を倒せる?
トップアスリートであれば、得た情報をすぐに体現できそうなものである。片山はそういった人間のことを「センスがある」と言い、そうでない自分にずっとガッカリしてきた。
だが、彼はそこで諦めてもこなかった。「じゃあどうすればセンスがある人を倒せるか、彼らよりもゴルフがうまくなるか。何を使えば、教わったことを“最短”でできるようになるか」を突き詰めてきたのが、40年以上に及ぶキャリアである。
「そう考えると、たくさんの道具を使うことにもつながる」。片山が試合会場にあらゆる練習器具、既製品でなく自作品をも持ち込む姿は広く知られたところ。バックヤードでは“アマチュア向け”、“女性用”なんていう商品のうたい文句もいとわず、クラブ選びに専心する。
「YouTubeで『ボールを打つだけではうまくならないですよ』と言ってきた。オレもね、みんな(トッププロ)みたいに、練習場で球をパカパカ打てないの(笑)。センスがないオレの場合は、それだとうまくならない。センスがないのを補うために、いろんな道具も使う」
片山を変えたジャンボの助言
頭には今も高校生だったころの記憶がある。当時、縁あって練習をともにし、食事もさせてもらったのが全盛期の尾崎将司だった。
「ジャンボさんに『お前は(恵まれた)体がないんだから、他人よりも本を読んで、頭を使ってゴルフに向き合いなさい』と言われて、それを信じてきた」
正面からのぶつかり合いでは勝てない。見ただけでは、体が覚えてくれない。そんな“不器用さ”を、思考すること、言語化すること、時間を費やすことで埋めてきた。
「おれは基本、今も究極にゴルフが好きなアマチュアみたいなもんなのよ。でも、だからこそやってきたことでアマチュアの人に教えることができる。言葉にできるとも思っている」