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生涯賞金22億超なのに「自分にはゴルフのセンスがない」片山晋呉のYouTubeが人気な理由
posted2020/11/30 11:01
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Yoichi Katsuragawa
トップアスリートが持つ技術や哲学を、人々に直接届けることはもう日常になった。選手とファンを媒介するツールは、既存メディアに代わってSNSが第一義的な情報源になりつつある。選手サイドにとっても、いまや発信力が問われる時代だ。
新型コロナウイルスの影響で春にシーズンが中断され、職場を失っていたプロゴルファーはこの間、YouTubeの番組に登場する機会を得たり、実際にチャンネルを開設する選手が増えた。
ゴルフのプレーはプロとアマの垣根が他のスポーツに比べて低く、技術的な悩みも、教えも共有しやすい。だから、いわゆるレッスンものは“優良コンテンツ”。一般のアマチュアが気兼ねなく、トッププロから動画で上達のヒントを教えてもらえるようになった。しかも、タダで!!
YouTubeはパンデミック前から
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ツアープロのゴルフYouTuberのなかでも、47歳の片山晋呉は成功例の代表格に挙がる。
今年開設した『45 GOLF - 片山晋呉チャンネル』が好評。登録者数16.1万人(11月27日時点)はプロゴルファー個人のチャンネルとしては突出している。
11月下旬までに投稿した約90本の動画は、とくに一般ゴルファー向けのレッスンが充実。初心者を対象としているようで、上級者やプロであっても、見直す価値があるという。グリップの握り方、アドレスの取り方といった、ゴルフの基本のキがあるかと思えば、ティーチングプロに最新理論を自ら学びに行く様子も収録されている。
目からウロコな情報がユーザーに受け、10月にはコアなファン向けのオンラインサロンの始動も発表。2000人の一次会員募集もすぐに埋まったという。
片山曰く、コロナ禍で「時間ができた」のは間違いないが、昨オフには構想が具体化していた。実際に配信がスタートしたのはパンデミック前の2月だった。
もちろん、台本は手弁当。撮影、編集等を手掛けるサポートスタッフにもプロゴルファーはおろかゴルフをよく知る人物はいないという。「ちょっと遅いかな、波に乗れないかなと思ったけど、自分で波を作れたかな。意外に自分に向いてますよ。プロデュースすることがおもしろくて」と驚きつつも、勝算もあった。