酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
なぜダルビッシュ&前田健太はサイ・ヤング賞“大差の2位”だった? 1位との指標を徹底比較すると…
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byGetty Images
posted2020/11/16 11:30
素晴らしい成績だった前田健太とダルビッシュだが、ビーバーとバウアーの成績がそれを上回ってしまった
〇最後の2登板
バウアー1勝1敗 15回 自責点3 2与四球 17奪三振 率1.80
ダルビッシュ1勝1敗 13回 自責点4 2与四球14奪三振 率2.77
デグロム0勝1敗 12回 自責点5 4与四球24奪三振 率3.75
サイ・ヤング賞争いが話題になっている中での、最後の2登板の成績である。
ダルビッシュは9月20日のツインズ戦で6回自責点4で敗戦投手となり、QSも逸した。最終の25日ホワイトソックス戦こそ7回無失点だったが、防御率が2点台に落ちた。これに対してバウアーは2試合ともに7回以上を投げて自責点2以下。そしてデグロムは最終登板、5回自責点3で降板した。
3投手は最後の2登板で、差がついたと見ることは可能だろう。
「対戦相手」という重要な判断基準
実は今季に関してはこうした指標以外に、重要な判断基準があった。「対戦相手」だ。新型コロナ禍で行われた今シーズン、各チームはリーグに関係なく近隣にある同地区のチームだけと対戦し、大陸を横断するような遠征はしなかった。そのため、同一リーグでも対戦チームが大きく異なっていたのだ。
〇ナ・リーグ上位3投手の対戦チームとそのリーグ順位
<バウアー(レッズ)>
ブルワーズ3試合(ナ中地区4位)
カブス2試合(ナ中地区1位)
タイガース2試合(ア中地区5位)
パイレーツ2試合(ナ中地区5位)
ホワイトソックス1試合(ア中地区2位)
ロイヤルズ1試合(ア中地区4位)
<ダルビッシュ(カブス)>
ホワイトソックス2試合(ア中地区2位)
レッズ2試合(ナ中地区2位)
ブルワーズ2試合(ナ中地区4位)
カーディナルス2試合(ナ中地区3位)
ツインズ1試合(ア中地区1位)
パイレーツ1試合(ナ中地区5位)
インディアンス1試合(ア中地区3位)
ロイヤルズ1試合(ア中地区4位)
<デグロム(メッツ)>
マーリンズ4試合(ナ東地区2位)
フィリーズ2試合(ナ東地区3位)
ブレーブス2試合(ナ東地区1位)
レッドソックス1試合(ア東地区5位)
レイズ1試合(ア東地区1位)
ブルージェイズ1試合(ア東地区3位)
ナショナルズ1試合(ナ東地区5位)
やはり「最後の2試合」の成績の差か
同じナ・リーグ中地区にあるレッズ、カブスに在籍するバウアーとダルビッシュは対戦相手がほぼ同じだったが、デグロムは全く違う相手と対戦していた。それだけに今回のサイ・ヤング賞の投票は難しかったのではないかと思う。
バウアーとダルビッシュの得票に大差がついた理由は「最後の2試合」の成績の差だった可能性は高いと思う。大統領選挙ではないが、バウアーはほんの小さな差と印象度で、地滑り的な勝利を得たということか。