オリンピックへの道BACK NUMBER
米露中の選手が来日、「偽陽性」内村航平も参加 東京五輪の鍵を握る“テスト大会”の成否は?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKYODO
posted2020/11/08 06:00
今年9月の全日本シニア選手権、観客席に消毒作業を行うスタッフ。全日本シニアでは約1000人だった観客が今大会では2000人程度となる見通しだ
「東京オリンピックの一助になれば」
また、来日時はチャーター機などの利用で、一般の乗客と接しないことも定めた。
4日にはアメリカの選手たちが羽田空港に降り立ったが、彼らもチャーター機だったという。空港内でPCR検査を受け、専用バスで宿泊先のホテルに向かった。
ホテルでは一般客と隔てられ、国ごとに異なるフロアを割り当てた。
試合や練習以外、外出は禁止され、また、毎日PCR検査を実施。陽性者あるいは規則を破った選手は参加できない。
そこまで手をかけて実施する背景は、渡辺会長の言葉に表れている。
「大会を成功させることで、東京オリンピックの一助になれば」
選手も理解している。
日本代表の谷川が10月中旬のイベントに参加した際に語った言葉に、思いが込められていた。
「今回うまくいけば、東京オリンピックができることを世界にアピールできると思います」
内村航平の陽性判定には大きな衝撃が走った
着々と大会へ向かって準備が進んでいるかに見える中、思いがけないこともあった。10月29日、ナショナルトレーニングセンターで連日練習に励んでいた内村航平がPCR検査で陽性と判定されたことだ。内村も今大会に出場する1人である。
その後、「偽陽性」であることが分かり、無事大会に出場することになったが、陽性と出たとき、大会に携わる人々をはじめ、他の競技関係者にも大きな衝撃が走った。
大会への入念な準備と、大会の持つ意味、つまり東京五輪への機運を起こすきっかけになることを知ればこそだった。
大会は有観客で行なわれ、観客に対しても入場時にサーモグラフィー、非接触型体温計による体温チェックを実施、手指のアルコール消毒などを行なう。
それもまた、オリンピック開催のための情報収集、シミュレーションの一環となる。
久々の国際大会であり、鉄棒で東京五輪日本代表を目指す内村が、今大会では、ゆか・あん馬・跳馬・鉄棒にエントリーしている点も楽しみなところだ。内村に限らず、久々の国際大会での各選手の演技が注目される。
同時に、コロナ下で開催される大会を終えて、どのようなレビューがなされるのか。
今後のスポーツイベントにとって、その評価にも、大きな注目が集まる。