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空手・組手の女王、植草歩が味わった敗北の絶望 “根拠のない自信”を得て再び頂点へ!
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byYuki Morishima(D-CORD)
posted2020/11/04 06:00
全日本選手権で4連覇も達成した植草歩。19年は厳しい1年となったが五輪へ浮上の兆しを見せている
かつてない苦しみを味わった2019年
「終わった瞬間はもう絶望しかなかったですね。“うわぁ~、どうしよう”みたいな」
かつてない苦しみを味わった2019年は、同時に、自分の弱さを知り、初心に立ち返るきっかけにもなったと振り返る。目標としていた東京五輪は来年に先送りとなったが、空手や自分を深く考える新たな気付きの時間になっている。
「どういう選手になりたいのか、どんな自分になって五輪で優勝したいか、しっかりと言葉にしていたつもりでしたが、それはあくまでも周りから期待されている言葉であって自分の言葉ではないとコーチに指摘されたんです。私自身はまったく能動的に考えられていなかったんです」
東京五輪では普段主戦場とする68kg超級ではなく、五輪階級の61kg超級で初代王者を狙う。
「これまでは東京でキラキラ輝く自分になって、最高の金メダルを獲りたいと考えていました。でも、今はそれ以上にもっと自分自身を熟知して、私にとって何がベストなのか、何が大切なのかを突き詰めたい。競技そのものだけでなく、人間力の部分も磨いて頂点を目指したい、そう思っています」
大舞台を約9カ月後に控え、日々さらなる技術の向上やトレーニングは欠かさない。同時に植草が重要視しているのがメンタルだ。
「自分より才能がある人はたくさんいます。その中で大切になるのは、最後は自分が勝つと強く思うことや、“私には自信しかない”というような、根拠のない自信だと思うんです。それは“根拠のある練習”をしているからこそ生まれると私は考えていて。その部分を極めていきたいですね」
彼女は、ただ純粋にもっと強くなるために、今日も自らを鍛錬する。