デートとかしたりしないの？「いやいやいやいやいやいや！」

　彼を初めて取材したのは、まだ拓殖大の大学生で、サンウルブズのメンバーに選ばれた2016年2月だった。まだ雪が残る八王子キャンパスでひとしきり取材を終えた後、ふと話を振ってみた。普段、どんなキャンパスライフ送ってるの？

「授業に出て、終わったら練習して、寮に帰って、ですね」

　てことは、ラグビーしかやってないってこと？

「そうですね。自分はラグビー選手ですから」

　じゃあ、休みの日は何してるの？　どこか遊びに行ったりするの？

「いや、たまに都心に出て、部員たちと食事したりしますけど、そんなにですね。基本、寮でゆっくりしてます」

　デートとかしたりしないの？

「いやいやいやいやいやいや！」

　そんな相手もいませんと言い、首から上を真っ赤にしながら、超高速で左右に振る22歳の青年の姿を、今もはっきり覚えている。

　昨年のW杯前と後では、愛称「ぐーくん」の知名度は、まるで別人のようである。まさか、バラエティ番組の画面の向こう側に、誰もが心和むあの福々しい笑顔が映る日が来るとは、初めて会った時には微塵も思わなかった。

©Takuya Sugiyama

「116.5kgの体重を、118kgに戻します」

　しかし、周囲の見る目が変わっても、何も変わっていなかった。ラグビーが一番――ジウォンはあの時のジウォンのままだった。

　チーム練習ができなかった自粛期間中も、“ひとりでできること”にひたすら打ち込んだ。

「練習をサボったら絶対に落ちていくと思いました」

　今の実際の体重は、116.5kgだという。

「フィットネスのタイムをキープしながら、これから118kgに戻します」

　彼がターゲットに見据えるのは、あくまで来年1月17日、宗像サニックスとのトップリーグ開幕戦、ただ一点だ。

　変わるものと、変わらないものがある。そう考えると、ちょっと微笑ましくもあった。

　かつて「ジャージしか持ってません」と平然と言い放った大学生が、今はちゃんとデートする時用の服を準備してあるという変化に、4年という歳月の流れを実感したのだった。