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羽生善治・藤井聡太…2人の天才を見守ってきた“将棋盤工場”の父と子 “苦しい時代”から将棋ブームの先へ
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byTadashi Shirasawa/Satoshi Shigeno
posted2020/11/01 17:04
羽生善治と藤井聡太。2人の天才は将棋界を動かし、そしてその波に対応してきた工場がある
苦しい時代に守り抜いてきたものを
取材を終えて、長距離バスの停留所まで車で送ってくれた大輔さんがふと話してくれた言葉が印象的だった。
「結構苦しい時代もあったみたいですよ、辞めた方が楽なんじゃないかって。でも、辞めたら終わりじゃないですか。僕も20代後半まではここにいなくて、それでも継ぐ決意っていうのができたのは、やっぱり普通の仕事じゃない、伝統工芸をなくさないで残すという特別な仕事だなっていうのがあったんですよね。
社長が苦しい時代に守り抜いてきたものを、ここで終わらせられないなという」
将棋は、長い年月を積み重ねて愛され続ける日本伝統のボードゲームである。そんな戦いと遊びのフィールドである将棋盤を生み出していく――そんな使命をもって、茨城木工は日々、1つの木材に将棋盤という新たな命を宿している。
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