ドロップショットに固執し続け……

　今大会ではドロップショットが得点源になっていたが、ナダルにはうまく対応され、効果は低かった。それでもジョコビッチはこの戦術に固執する。試合後、ようやく冷静さを取り戻したジョコビッチは、こう振り返った。

「今日はあまりうまくいかなかった。僕が仕掛けたドロップショットで多く得点したのは彼（ナダル）の方だ。リズムを崩したかったが、彼には準備ができていた」

　ジョコビッチは「少し急ぎすぎた。ポイントを短くして、ウィナーを取ろうとした」と悔やんだが、もちろん、そうさせたのはナダルだ。ジョコビッチはこう続けるのだ。

「（急ぎすぎたのは）彼の素晴らしいディフェンスのせいでもある。彼は最初の2セット、まったくと言っていいほどミスがなかった。何とかしなきゃ、と思っていた。でも、解決策が見つからなかった」

　これまで55回も対戦し、互いの力量は分かっている。ナダルの充実ぶりと気迫を体感し、「何とかしなきゃ」ともがき、うまくいかずに焦り、混乱した。それが第2セットまでのジョコビッチだった。

フェデラーと並ぶ20個目の栄冠

　第3セットはジョコビッチのリスクを負ったプレーが得点につながり、両者にふさわしいスコアになったが、本来と異なる領域で戦っているジョコビッチに勝ち目はなかった。

　フェデラーと並ぶ史上最多タイの20個目のグランドスラムタイトルをつかんだナダルが、試合を振り返った。

「驚くほどのレベルでプレーできた。ほかに付け足す言葉はない。だから彼にこのスコアで勝てたんだ。最高レベルでプレーする必要があった試合で、最高レベルでプレーができた。このことをとても誇りに思う」

　ジョコビッチは「彼のプレーに、その質の高さに驚かされた。完璧だった。彼は勝つべくして勝った」と脱帽するしかなかった。

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