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会長は“大統領の甥” ビッグクラブを抑えてトルコリーグ制覇「イスタンブールBBSK」ってどこ?
text by
フランク・シモン&ティモテ・クレパンFrank Simon et Timothé Crépin
photograph byDaniel Bardou/L’Équipe
posted2020/10/14 06:00
昨季、初優勝を果たしたイスタンブール・バシャクシェヒルFK
イスタンブールのビッグ3、トラブゾンスポル、ブルサスポルに次ぐ6番目のリーグ優勝クラブとなったバシャクシェヒルだが、タイトル奪取は決して偶然でも恣意的なものでもなかった。ガラタサライを筆頭にビッグ3が自滅するなか、昨季のリーグはシバススポルとトラブゾンスポルが首位争いを演じ、どちらかがタイトルを手にすると見られていた。ところがコロナ禍による中断の後に再開した終盤戦で、バシャクシェヒルが一気に両者を抜き去ったのだった。
クラブとAKPは親密な関係にあると見られている。それは単に本拠地をAKPの勢力圏に定めたからばかりではない。クラブ会長はエルドアン大統領の義理の甥であるギョクセル・ギュムスダグであり、メインスポンサーは大統領の個人的専属医・ファフレッティン・コジャが経営する医療グループのメディポルであるからだ。
2014年に完成した新スタジアム(1万7300人収容のバシャクシェヒル・ファティ・テリム・スタジアム)は、国のインフラ整備を専門におこなうカルヨン・グループによって建てられた。そのこけら落としには、かつてはアマチュアサッカー選手として知られ、直後に大統領に選出されるエルドアンが、新しいチームカラーとなったオレンジ色の12番のレプリカを着て出席したのだった。さらにクラブの運営委員会も、国家権力に近い国営企業の代表者たちで構成されている。
人気はなくても徹底してきた「堅実路線」
「とはいえクラブが、レフリーから身びいきな判定をされることはない」と、カナルプリュス・アフリークでトルコリーグの解説を担当するゴーチエ・ド・マリアンは語る。
「このクラブの最大の長所はグループが安定していることだ。イスタンブールのライバルたちとは正反対の堅実路線をとり、移籍競争をエスカレートさせて獲得した選手をレンタルで貸し出すことはしない」
大金をはたいての派手な選手獲得を絶対におこなわない。ただ人気の面では他のエリートクラブから大きく劣っており、ホームでの平均観客動員は3000人に満たない。そしてクラブが拠り所にしているのが、昨年までエマニュエル・アデバヨール(2017~19年、元トーゴ代表、36歳)も在籍したように、30歳を過ぎたベテラン選手たちの経験である。ロビーニョ(36歳、元ブラジル代表)やガエル・クリシ(35歳、元フランス代表)、マルティン・シュクルテル(35歳、元スロバキア代表)、デンバ・バ(35歳、元セネガル代表)……。シュクルテルとバのふたりは、自由契約のため移籍金なしで獲得した。また、昨年夏にカーンから獲得したフランス人ストライカーのエンゾ・クリベリも、移籍金は250万ユーロに過ぎなかった。ヨーロッパレベルではまだ名が知られていないクラブに移ったことに、クリベリは何の不満も抱いてはいない。
若いクラブがビッグクラブにも負けない理由
「別の何か――別の文化や別のサッカーを知りたかったんだ」と彼は言う。
「クラブは少しずつ成長している。さらに進化するために、リーグやヨーロッパカップでの勝利が必要だ。イスタンブールでは、ガラタサライとベシクタシュ、フェネルバフチェと並び立つのは簡単ではない。でもわれわれは新興勢力として彼らビッグクラブの間に割って入ることができた」