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「瀬戸大也に五輪に出る資格はない」は的外れ…スポンサーを失った“競泳エース”の今後とは?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2020/10/07 17:00
19年の世界選手権で2個の金メダルと1個の銀メダルを獲得した瀬戸大也
スポンサーがつくのは成績が良いからではない
先に記したように、瀬戸はスポンサー契約が次々に解除されたことで活動資金などを大きく失うことになった。
選手にスポンサーがつくのは、競技成績によるものではない。国際舞台で華々しい結果を残したからではない。スポンサーがアスリートと契約を交わすのは「イメージ」に対してにほかならない。
その選手への好感度や、企業イメージに合致する、あるいは企業イメージを向上させ得る姿勢への高額の報酬だ。その点で、プロ野球などのプロスポーツとは異なる。これはどの選手であっても、意識する点であるように思う。
ANAをはじめとするスポンサーから瀬戸が得ていたのも、そうした対価にほかならない。スポンサーを得られるだけの存在になれば、同時に注目度も高い状態になっている。背負うものも大きくなる。瀬戸はそうした意識が弱かった、その自覚に欠けていた感があるのは否めないし、契約が解除されるのはいたしかたないことだろう。
「オリンピックに出るべきではない」という論は…
ただし、どれだけ引き起こした事態の影響が大きくても競技そのものとは別の話だ。「オリンピックに出るべきではない」、「出る資格はない」といった論は、的を射ていない。日本水泳連盟が五輪代表内定の取り消しをしない方針であることも違和感はない。
とはいえ、これまでのように進んでいくのは難しい。
例えば、所属先のない選手は大会に出場することができない。今後、所属先となる団体を探さなければならない。
日本短水路選手権の出場辞退、その後の大会のスケジュールを考えるにあたって、所属先をみつけられるかどうかは重要な要素となる。
大会のスケジュールが流動的になれば、練習をはじめとして長期的な計画を描くのも困難だろう。