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「37歳、40歳でも今がベストだと」 国枝慎吾、“2019年グランドスラム未勝利”から復活できた理由〈2大会ぶり金メダル〉
posted2021/09/05 17:01
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Naoya Sanuki
2019年、国枝慎吾に異変が起きた。車いすテニスツアーで優勝9回、自己最多となるシーズン53勝(8敗)を挙げたが、にもかかわらず、グランドスラム(四大大会)での優勝が一度もなかったのだ。ウィンブルドンが準優勝、全豪と全仏は4強、全米は1回戦敗退と、決勝の舞台にも一度しか立てなかった(いずれもシングルス、以下同)。
四大大会で通算22回の優勝、パラリンピックでも'08年北京、'12年ロンドンを連覇するなど大舞台に強いはずの国枝が、なぜ勝てなかったのか?
複数の要因がある。ひとつは周囲のレベルアップだ。次に、取り組んできたバックハンドの改良が未完成だったこと。さらに、国枝自身にグランドスラムへの意識過剰があった。それらを順に見ていく。
10数年前とは「レベルが違う」
2月24日付けのランキングでは、1位の国枝が2位のグスタボ・フェルナンデス(アルゼンチン)以下を大きく引き離している。とはいえ、男子の車いすテニスは今、誰が勝ってもおかしくない状況にある。
'16年のリオ・パラリンピックでゴードン・リード(英国/5位)が金メダルを獲得。その後、フェルナンデスが台頭し、'19年には全豪、全仏、ウィンブルドンで優勝、ランキング1位でシーズンを終えた。
国枝も、初めてグランドスラムを制した'07年頃とは「まったくレベルが違う」と、ツアー全体のレベルアップを実感している。彼の力が落ちたのではなく、26歳のフェルナンデスや28歳のリード、さらに最新のランキングで3位の22歳、アルフィー・ヒューエット(英国)など若い選手が力をつけたのだ。
'14年には、まだシングルスを開催していなかったウィンブルドンを除く全豪、全仏、全米のタイトルを独占した国枝も、この群雄割拠の時代に勝ち続ける難しさを痛感しているだろう。