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Bリーグ川崎・佐藤HCは理想の上司? スローガン「UN1TE」の「1」に込めた意味とは
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by(c)KAWASAKI BRAVE THUNDERS
posted2020/10/01 11:50
ニック・ファジーカス(左)と佐藤HC。3つの優勝とその先を目指す
攻撃から守備もNo.1を目指そう
バスケットボールには、PPPという指標がある。Points Per Possessionの略語で、要は、1回の攻撃でチームが平均で何点決めているかを示すデータだ。
PPPのデータのうち、「相手チーム」の「速攻からの攻撃」の値(平均得点)をリーグ最少にするというのが昨シーズンの目標だった。
「トランジション・ディフェンス(攻撃から守備に切り替わった直後の守備)を良くしないと、絶対にディフェンスの効率は上がらないので、『トランジション・ディフェンスでリーグNo.1を目指そう』と選手に伝えました。そのための方法を、ACの意見も聞きながら、細かく、細かく、考えていって。オフェンスの終わり方から、リバウンドの入り方、守備への戻り方について、練習で取り組めるようにドリル化しました」
ニックであろうとできなければ例外はないよ
川崎のなかで、守備へ戻るのがもっとも遅いと見られていたのが、207cm、114kgのエース、ファジーカスだった。開幕前の個人面談の席で、佐藤はこう伝えた。
「チームに例外はない。ニックであろうともやるべきことができなければ、できていない姿の映像をチームみんなの前で最初に見せるよ」
ファジーカスからは、こう返ってきた。
「コーチ、大丈夫だ。そんな映像を見せられて落ち込むような、ヤワな自分とは20代のうちにサヨナラしてるから」
それを聞いて、佐藤は心のなかでガッツポーズをした。
「誰かが『自分は厳しく言われるのに、ニックは指摘されないんだ』と感じるような雰囲気を作ってしまうのは、チームを作る上でもっとも良くないことで」
――成果はありましたか?
「ニックの意識はものすごく向上しました。チームでこれを目指すと示せば、きちんと理解して、実行してくれる選手なので。あとは、ジョーダン(・ヒース)と、マティアス(・カルファニ)の新加入の2人ですよ! 彼らのハッスルプレーによってトランジション・ディフェンスでの成果をあげられたのは間違いないです」
この指標でもシーズン前の目標をしっかり達成。相手の速攻に対する守備がリーグ最強のチームとなった。
やると決めたことは、絶対にやりとげる。佐藤の気質が乗り移ったような成果だった。