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「セブンズがなかったらエディーさんにも…」藤田慶和が語るプロアスリートの務め
posted2020/10/04 06:01
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph by
Nobuhiko Otomo
「セブンズのことをもっと知ってほしいと思っているんです」
藤田慶和は明るい口調で言った。
「東京五輪の1年延期が決まったときは、このキツい合宿の繰り返しがまた1年続くのかと思ったけど、今は準備する期間が増えて良かったとポジティブにとらえています」
その発想は、新たな行動へと自分を促した。藤田は、五輪延期が決まった後の4月から自身のYouTubeチャンネルを開設。個人練習の様子やセブンズの合宿の様子、選手の素顔の紹介など積極的にコンテンツを公開している。
「東京五輪本番になってから『セブンズって何?』とか『これってラグビーなの?』とか言われないよう、日本で開催されるんだから大会を盛り上げたい。今の僕があるのはセブンズのおかげですから」
15人制日本代表で18歳7カ月の最年少キャップ記録を持つ藤田だが、キャリアはセブンズが先だ。東福岡高3年の11月、18歳2カ月でワールドシリーズにデビュー。セブンズの世界年間MVPにも輝いた南アフリカの英雄セシル・アフリカの独走にはるか後方から追いついてタックルを決め、世界を驚かせた。
「セブンズがなかったらエディーさんにも目をつけてもらえなかったし、'15年のW杯にも出てなかった。それに、セブンズは本当に面白いです」
五輪はあると信じ、準備を楽しむこと
15人制と同じサイズのグラウンドに選手は半分以下の7人。人数が少なくボールがよく動き、よく見える。試合は7分ハーフでスピーディーに進み、次から次といろいろなチームの試合が観られる。そして楽しいのは観客だけではない。
「ワールドシリーズを転戦するから、海外の選手とも仲間意識が芽生えるんです。いつも同じホテルで並んで食事しているし、SNSでも海外のトップ選手がコメントをくれたり」
コロナ禍のもと、1年後の五輪が予定通り開催される保証はない。
「でも僕らは、あると信じて準備するしかない。それは、冬の全国大会があると信じて練習している高校生も同じだと思う。大事なのは、その準備自体も楽しむこと」
無論楽しいだけですむわけもない。それでも過酷な準備を楽しく、前向きに、全力で遂行する。その姿を見せることがプロのアスリートの務めだと、藤田は思っている。