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ユベントス監督にピルロ アラフォー世代の若き指揮官は、なぜMF出身者ばかりなのか?
posted2020/10/02 06:01
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph by
Getty Images
ピルロがユベントスの監督になったと聞いて、幸運とチャンスを掴み取るひきの強さに感心した。
元々ユベントスのU23の監督に就任していたが、サッリ前監督の解任で急遽大役が回ってきた。ユベントス監督の座というのは、どれだけ順番待ちしてもやってくるかすら分からない、カルチョの最大のポジションだ。そんな座を、汗すらかかず飄々と、ピッチでのプレーさながらに手にしたピルロには期待しかない。
監督経験がない、と懐疑派はいう。もっともな意見だ。しかしその「経験」がどれだけ必要なのかは明確に定義できない。近年でも、1部リーグ監督経験のないジダンは、そのカリスマだけでCL3連覇を達成した。'08年に37歳でバルサの監督に就任したグアルディオラの実績は言うまでもない。仮にピルロが誰かの下で1、2年監督経験を積んだとしても、その時の会長の意向やチーム状況次第では大役は回ってこないだろう。監督経験よりも、人間を惹きつける個性やカリスマの方が重要なのだ。
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一方で、RBライプツィヒのナーゲルスマンのように、20歳の頃からトゥヘルに理論を詰め込まれ、ある意味で作りあげられたシステマティックな監督も欧州を席巻する。
トップチームのアラフォー監督たちに期待
彼らに共通するのは若さくらいだ。監督も選手と同じで、若さは大きな資産であり、欧州のトップクラブで若手監督は年々増えている。ランパード率いるチェルシーは今夏最も効果的な補強をしており、プレミア優勝を狙うだろう。バルサはシャビを監督にしたくてうずうずしている(本人は“クラブ内部がごたごたしているみたいだから、やめておく”と断った。賢明である)。同世代のシャビ・アロンソもレアル・ソシエダの下部組織を率い今夏もトップチームに続々と有望な若手を送り込んでいた。何かあれば、トップチームの監督に昇格するかもしれない。
それにしても、ピルロ、シャビ、シャビ・アロンソ、ランパードに、レンジャーズのジェラード、ナポリのガットゥーゾと、この世代の監督はなぜかMFばかりだ。グアルディオラは言った。「サッカーはMFのためのものだ」。かつて中盤で指揮をとった彼らはベンチからどんな世界観をピッチに描くのか。若さと監督としての手腕は関係ないと意気込むアラフォーたちを見守りたい。