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リーグ再開のNBA、試合激減のMLB、感染爆発の大学アメフト…米国スポーツで“明暗が分かれた”理由
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byGetty Images
posted2020/09/30 17:00
NBAはフロリダ州のウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート内にある複合施設「ESPN Wide World Of Sports」の会場で集中開催した
リーグ終盤には陽性者ゼロに
感染対策の一つとして、施設内の通路はほとんどが一方通行で、誰かと不用意に接することがない状況だったり、消毒や清掃作業なども徹底されていた。しかし自チーム、相手チームもバブルのなかで生活しているため、一定の安心感があり、過剰なほど神経質にはならなかったという。
「NBAやほかのプロスポーツは、今回のコロナ対策に関してスタンダードが非常に高いと感じます。スタンダードを下げて実施するという発想や、是が非でもリーグ再開という前提では物事を進めないのが、米国のプロスポーツの特徴だと思います。NBAの場合、チームのオーナーやGM、選手会の声を丁寧に汲み取って、全員にベストな環境を作り上げ、リーグ再開にこぎ着けたと思っています」(田島さん)
選手がバブルに入る前には数件あった陽性反応者も、リーグ再開からプレーオフまで陽性ゼロだった。
コミッショナーのアダム・シルバー氏の強いリーダーシップ、実行力、そして各チームや選手のプライドとチームワークの賜物と言える。
MLBでは細かな規則を配布したが……
チームをバブルに入れたNBAとは異なり、MLBは飛行機やバスでの移動を伴いながら、遠征を行っている。
「コロナで色々な状況が変わってしまったので、新たな環境や状況に適応できるようにベストを尽くしています」と話すのは、アリゾナ・ダイヤモンドバックスでアスレチックトレーナーとして働く谷沢順子さん。
アスレチックトレーナーという通常業務に加え、強力な消毒スプレーを持ち歩き、選手が触った場所にスプレーする「消毒係」としても奮闘中だ。
MLBはマスク着用、物理的距離をとること、ホテルからの外出禁止、グループでのミーティングや食事の禁止、バス移動の際の台数、スタッフの人数制限など細かな規則を配布したが、開幕当初は足並みがそろわなかった。チーム内でクラスター感染が発生し、問題になったのがマイアミ・マーリンズとセントルイス・カージナルス。両チームの無自覚な行動で感染が拡大。その影響で43試合が延期の憂き目にあった。
ダイヤモンドバックスはMLBの規則に沿って、移動の際の注意を徹底した。
「選手が後方座席、スタッフは前方でしたが、選手が固まって座ると、感染者が出た際に周囲の選手も濃厚接触者になり、隔離の必要性がでるため分散して座らせています。陽性者が出た時に周囲に誰がいたか、などすぐに感染経路を特定できるように席を移動するのも禁止されています」(谷沢さん)
スタジアムでも選手同士が3密にならないように、通常のロッカーに加えて、会議室やVIPルームなどもロッカーとして使用しているほか、チームスタッフも、アスレチックトレーナーのように選手と直に接するスタッフ、接しないオフィススタッフ、外部スタッフの3つのグループに分けられ、それぞれ異なる部屋、通路を使うなど、互いに接触しない努力をしている。
徐々に陽性者が少なくなり、9月11日からの1週間では1万2381件の検査を行い、陽性者は控えのマイナーリーガー2選手のみ。開幕当初は不安視されていたものの、終盤に入ってリーグ一丸でのコロナ対策が実っている。