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丸山茂樹「僕は失敗してしまったから」 “憧れる後輩”に託す思いとタイガーとの秘話
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAsami Enomoto
posted2020/10/01 17:00
丸山茂樹がパーソナリティを務めるラジオ番組にゲスト出演した星野陸也。偉大なる先輩のアドバイスを胸に、飛躍を誓った
18年全米オープン練習ラウンドにて
ところで星野にとっても、まだ短いプロのキャリアにおいて“先輩”は大きな存在だった。
話は18年のプロ初優勝の数カ月前にさかのぼる。同年6月、星野はニューヨーク州シネコックヒルズGCで行われた全米オープンに初出場。開幕前の松山英樹との練習ラウンド中、テレビ中継のリポーターとして現地で視察していた丸山にアドバイスをもらう機会があった。
「シネコックヒルズは地面がすごく硬くて、なかなかうまく打てなかったんです。丸山さんに『どうやって打ってる?』と声をかけていただいて。体全体を使う柔らかいアプローチを教えてもらいました。簡単に言うと、自分は打ち方がまったく逆で、“手打ち”だった。でも丸山さんは体の回転でフェースにのせて打っていて」
丸山のグリーン周りからの“寄せ”の技術は全盛期、世界屈指の多彩さと精密さが評判だったが、星野が感じ取ったのはそれよりもずっとベーシックな部分の違い。予選落ちしてヒマになった週末2日間も、彼は大会の会場を訪れて黙々と打ち込んだ。
初優勝はシネコックでの経験が役立った
「教わったことをずっと練習して、アプローチだけでなく、同じ打ち方で(長い)ショットにもつながるように考えました。正直言って、(同年9月に)初優勝したのも、シネコックでの練習ラウンドの経験と、感じたものがつながったところが大きかった」
当時、“今か、今か”と周囲も待ちわびていた初勝利の裏には、貴重な教えとスポンジのような高い吸収力があったわけだ。