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丸山茂樹「僕は失敗してしまったから」 “憧れる後輩”に託す思いとタイガーとの秘話
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAsami Enomoto
posted2020/10/01 17:00
丸山茂樹がパーソナリティを務めるラジオ番組にゲスト出演した星野陸也。偉大なる先輩のアドバイスを胸に、飛躍を誓った
米ツアーを目指す星野の課題とは?
具体的に「日本ツアーの賞金王」という目標を口にするようになった星野だが、その先にはPGAツアー進出の夢がある。先輩がかつて3勝を挙げた世界最高峰の場所だ。
丸山は星野のグリーン周りの技術について「ボールを手で持ってフワッと投げるように、体幹で打てるようになってきた」と上達を認めながら、米国で戦うための技術的な注文を付けた。
「陸也に勉強してもらいたいのは、70%の力でショットのディスタンスコントロールをすること。ドライバーはドローもフェードも、高さもうまく打ち分けができるけれど、アイアンやウェッジで常に気持ちよく振っている。そのほうが(精神的にも)ラクだから。でもそれでは(番手と番手の)ビトイーンの距離が残ったときに難しい。一発当たり損ねたらアメリカでは池に入る。逃げるところは逃げる、コントロールを持たないと大きな“ケガ”をする」
グリーンに近づけば近づくほど、ショットの許容エリアが狭くなる米国のコースでは、リスクを回避しながら打つマネジメント力、その判断に対応しうるショット技術がより問われる。「(松山)英樹はそこが抜群にうまい。スリークォーターなんかのショットが光る」と付け加えた。
「すべての要素のコンビネーションが高いレベルで取れていないと、アメリカでは上に行けない。ドライバーが“100”でもアプローチが“50”になった時点で落ちてしまう」
トータルバランスの重要性を説くのは、すでに後輩のレベルがいくつかのポイントで基準値に達していると考えるからこそでもある。
丸山が「失敗」と語る後悔の念
だが丸山は、その穴のないプレーヤーを目指すうえで「なにより個性を見失って欲しくない」と訴えた。それも、いささかショッキングな表現方法で。
「僕はそれで、失敗してしまったから」
すべての男子ゴルファーが憧れるPGAツアーでシードを9年維持。賞金だけで累計15億円弱を稼ぎ、日本人歴代2位の3勝を飾ったキャリアを、「失敗」と言うのがふさわしいかは疑問だが、本人にしてみれば後悔もあった。
「アメリカに行った当時、一番失敗したのは情報を取りすぎてしまったこと。アプローチには自信があって、周りの選手を見て『大したことない、これなら僕でもできる』と思った。でもショットは……ロングアイアンの精度、ドライバーの飛距離、『これは次元が違う』と」