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世界1位を経験してもピリピリ感ゼロでゆるキャラみたい バドミントン山口茜の真骨頂とは?
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byItaru Chiba
posted2020/09/28 18:00
9月上旬、日本代表の合宿に参加した山口。東京五輪へ向けた抱負を語ってくれた
奥原に敗れ、涙を流したリオ五輪
「これが今の自分の実力」と、奥原希望との日本勢対決に敗れたリオ五輪では、控えめな性格で、あまり感情を表に出さない彼女が、こらえきれず涙を流した。裏を返せば、それほどかつてないくらいの悔しさを感じた瞬間でもあったということでもあり、その後、彼女がどんな成長を見せるのか、非常に楽しみになった。
4年後に向けて頑張るのではなく、次の試合で勝てるように。目の前のことを一歩ずつ着実に。そのスタンスは昔も今も、立場が変わろうとも、彼女の中では不変なものとなっている。
「リオの時はまだ世界ランキングも10位前後で、シード権もなく、一番年下ということもあって、誰と対戦するときも向かっていく気持ちでやれていました。ただ、リオが終わって、ワールドシリーズで優勝してランキングも上がっていくなかで、自分もそういう選手たちと対等に見られるようになってきたのかなと思います。最近では年下の選手も出てきて、単純に向かっていける立場ではなくなりつつあります。
ただ、ランキングが上位になって、シードがある分、“必ずベスト8に入らなければいけない”と1、2回戦のプレーが堅くなってしまうことが多くなっていたんですが、それを3、4年経験できたことも大きい。昔はトップ選手に対して『何点取れるかな』くらいの気持ちで臨んでいたんですが、今は『今日は勝ちたい、勝ちに行く!』という気持ちで試合に入れるようになりました」
「勝山の人間として戦いたい」
山口の強さの秘密はそのプレースタイルはもとより、意志の強さと前向きな思考にある。彼女が高校3年時にはこんなこともあった。
リオ五輪に向け重要な大会として位置づけられていた世界選手権か、または高校最後のインターハイか。どちらかいずれの出場を迫られたとき、「高校最後の1年は、育ててもらった勝山(高校)の人間として戦いたい」と迷うことなくインターハイ出場を選択した。大会レベルは異なるが、その大会で山口は見事史上初の3連覇を成し遂げている。
「以前から前向きではありますけど、より前向きな気持ちで試合に臨めるようになりました。もちろん、ランキング上位選手として常に結果を求められていることは理解していますが、その上で結果を気にせずにどれだけプレーを楽しめるかという部分に対しても、気持ち的に余裕を持ち、考えすぎないでプレーできるようにしていきたいですね」